Last Updated on 更新日2018.4.9 by
今回、開業社会保険労務士として事務所を構える漆原香奈恵さんが、取材に協力してくださいました。
社会保険労務士の業務は幅広く、私たちが働く中で、多くの場面に関わっています。
社会保険労務士とは、人が働くと発生する労務管理や就業のルール、社会保険における複雑な法令を円滑に進めることによって、働く上で受け取れる保障や健全な労働環境の整備などを企業の代わりに担ってくれています。
日々、そのような業務を行う社会保険労務士として、自身の事務所を構える漆原さん。
講師や本を出版するなど多岐にわたる活躍をしている漆原さんの仕事観ややりがいに取材で迫りました。
この記事の目次
多くの社会保険労務士がいる中、漆原さんが提供する価値とは
___同業者が多くいる中で、他の同業者と差別化をしなければならないと思います。漆原さんはどのような点で、違う価値を提供できていると思いますか。
弊所では、事業主である私が、お客様と直接対応するため、安心感を提供することができる点ではないでしょうか。私自身が対応することによって、お客様の現状や気持ちを汲み取ることを大事にしています。なぜなら、専門家としての経験やキャリアを積んできたからこそ、細やかな部分に気づくことが出来るからです。
例えば、専門家だから頼りに相談しているのに、新人職員など、まだ経験の浅い職員に全てを担当されたら、私なら不安になると思うのです。お客様にはそのような気持ちにさせたくない。このような思いで、できる限り私自身がお客様と接することとしています。
___確かに経験のないスタッフに対応されると不安になりますよね。逆に、経験豊かな方なら安心感や信頼感をもって任せられそうです。
お客様と直接対応する以外にも、漆原さん自身が女性事業主である点で他の同業者と違う強みがありそうだと思いました。その点はいかがでしょうか。
たしかに、私自身も女性事業主であるため、ご年配の男性社労士に比べると、女性や若い方でも相談しやすいのか、女性事業主や若手経営者のお客さまは多いですね。
理由としては、女性ならではの雰囲気や発想があり、ライフステージを共感し合えるので、身近に感じていただけることではないでしょうか。私自身が仕事をしながら子育てや家事の両立を経験してきましたから。最近では、特定の業種や女性起業家限定だったり、企業が主催されたりしているコミュニティーや団体、シェアオフィスなどの専門家アドバイザーを務めさせていただく機会も増えてきました。自治体よりお声がけいただき、女性起業家向けのイベントを開催するために業務提携することもあります。
また、見た目も社労士っぽくないと言われることが結構あります。専門家にはない話しやすさを感じていただけているのだと解釈しております。
仕事をする上で大切にしていること
___仕事の面以外でも子育てや家庭などプライベートの面で、相談しやすいのが事務所の特徴の1つでもあるようですね。事務所の特色以外にも、仕事に活きている漆原さんの強みや大切にしている考えはありますか。
私が仕事をする上で大切にしているのは
- 今出来ることや目標に精一杯取り組み、積み重ねていくこと。
- 人生計画年表(ライフシフト計画)をつくり、将来の自分をイメージすること。
この2点が、今の私に繋がるポイントです。
今を積み重ねるとは
___今を積み重ねることが、なぜ大切なのでしょうか。
今の自分が精一杯に乗り越えた、小さな成功体験を積み重ねることによって、自身の可能性が広がるからです。全力で問題にぶつかってきた失敗を含む経験が、自分を成長させてくれます。
また、成功体験を積み重ねることが自信にも繋がります。
こうして、目の前にある課題へ真剣に取り組んだ結果、今までにない考えや発想ができるようになり、自分のステージを上げてくれます。
ステージが上がると過去の自分には見えてなかった景色が見えるようになるため、同時に新たな挑戦も見えてきます。そこから、その見えてきた挑戦にも真剣に取り組み、積み重ね続けるのが大切です。なぜなら、その積み重ねが過去の予想を超えるスケールに広がっていくからです。
また、仕事以外にも、ライフステージごとの具体的な目標を定めて取り組んできました。
目標をたてる。なぜなら、自分が想像できた目標は乗り越えられるから。
___目の前の仕事に真剣に取り組むことが大切なのですね。また、将来の目標を決めるのも大切という話ですが、自身は定めた目標を、漆原さんは叶えてきたのでしょうか。
面白いことに、具体的な目標を立てていると、自然と意識が目標に向いて行動するので、今のところは実現できています。経験を積み重ねてきた将来の自分なら、今の自分が思い描いた目標を意外と達成できてしまうのです。行動するかどうかが大切なので、行動するために、目標や計画を立てます。
私が大学生のときに、将来の目標を決め、人生計画年表を作りました。将来の私が30代、40代…の時には、こんな風に人生のステージを過ごしたいとイメージした目標を決めていたのです。
当時、時代は不況の渦中にあったため、なおさら、「時代に振り回されないように、自立して、自分自身の足で進む道を決めないと」と意気込んでいました。その一環として、ライフシフト計画を立てたのです。ですが、もちろん、その時の自分が思い描いた目標・計画を実現できるかどうかなんて、当時の自分としては分かりませんでした。
しかし、現在に至るまで、その時に決意した小さな目標を一つ一つ着実に実現することができています。もちろん、ここまで自分のできる努力も積み重ねてきましたが、それでも過去の自分が立てた目標を、確実に叶えてきていることに驚いています。
なので、今の皆さまがイメージできる目標を、皆さまには抱いてほしいです。
今の皆さまがイメージできた目標であれば、今より成長している未来の自分は達成できるはずですから。30代、40代、50代…をどんなふうに生きたいかを決め、それに向かって行動していくことが大切です。すると自然に様々な経験が積み重なっていき、結果、来るべき段階で目標を達成できる力が身についているはずです。
漆原さんの価値観を広げたママ士業の会とは
___今の自分から見えている景色から立てた目標は、自然と実現できるのですね。自分も人生計画年表を作ってみようと思います。話は変わりますが、漆原さんは自身の仕事以外にもママ士業の会を運営していますよね。このママ士業の会も漆原さんの価値観を変えたのではないでしょうか。
そうですね。ママ士業の会を運営していく中で、私は沢山のことを学び、成長できる機会に巡り合うことが出来ました。
まず、ママ士業の会は『母親であり、士業として仕事もしている女性たちの集まり』です。母親でありながら法律会計系専門家でもある女性が中心となって結成されています。その活動の一環として、定期ランチ会での交流や情報交換、セミナーなどの勉強会、企業とのコラボイベントなどがあります。
___漆原さんが発起人であるママ士業の会に、そのような背景があったのですね。先程の話に戻りますが、ママ士業の会を運営していく中で、どのようにして成長できる機会と出会ったのですか。
ママ士業の会でセミナーの講師デビューをしたことが一つあげられます。開業して間もない頃は、講師を務める機会など全く考えおりませんでした。しかし、今までチャレンジしたことのない講師を経験することで、自分の思い込みが次第に壊れていきました。講師を務めることはないだろうという、それまでの固定概念が壊れて、次第に自分が講師を務めるのは特別なことではなくなっていったのです。その時に、「自分にはあまり関係ないし、出来ない」と思い込んでいたことも、やればできるのではないかと学びました。また、その小さな一歩が次の一歩に繋がっていき、どんどんと自分の中の可能性を広げっていったのです。
___先程の仕事で大切にしているという「今を積み重ねる」ともつながっていきますね。その積み重ねによって、漆原さんの可能性はどのように広がっていきましたか。
今まで、自分には手が届かないと、最初から諦めて視野にいれていなかったお仕事の話もいただくようになりました。例えば、企業や同業である社会保険労務士、行政書士、起業家向けの講演にお声がけいただいたり、自治体との共催、書籍を執筆する機会にも恵まれました。 著書を商業出版する人生なんて、大学生のころの自分には想像すらできませんでしたから驚きですよね。 その積み重ねによって、自分には出来ないと思い込んでいたものは、出来ないのではなく、無縁だと決めつけてやらないだけだったということが分かりました。
実際は、初めて挑戦することは大変でしたが、その都度、力を尽くすことで、私自身の成長や変化に繋がっています。私なんかが本当にやり遂げられるのかと感じるような挑戦もありました。ですが、なんとかやり遂げて実現することができています。
仕事のやりがいとは
___まさに、ママ士業の会がきっかけで、自分で作った枠にとらわれない可能性へのチャレンジが大事だと学んだのですね。それら挑戦はとても大変だという話でしたが、それを乗り越えるエネルギーも必要になりますよね。仕事や挑戦に対するモチベーションやエネルギーの源とは何ですか。
仕事の原動力や、やりがいを感じる瞬間は、大きく分けて2つです。
- お客様から心からありがとうの言葉を頂いたとき
- 難しい案件で結果を出したとき
この瞬間が仕事のやりがいやモチベーションに繋がっています。
どんなに大変な案件だったとしても、お客様からの「ありがとう」の一言で報われる
ありがとうのお言葉をいただいた瞬間が、自分の成長を一番実感できるときです。またお役に立てるように頑張ろうという気持ちが漲り、やりがいに変わるのだと思います。
特に嬉しいと感じるのには、お客様からいただいたお礼の手紙や心のこもったアンケートがあります。ありがとうの気持ちがこもったお手紙やアンケートは、私にとって何よりうれしいラブレターなのです。
心からの感謝の気持ちを頂けたと感じた時、誰しもがやりがいを感じるのではないでしょうか。自分が必要とされた時、貢献できたと実感できた時に、人はやりがいや充実感を得られるのでしょうね。
難しい案件や挑戦で結果を出しときに感じるやりがい
また、難しい案件や挑戦を乗り越えた時にも、やりがいを実感じますね。同業者からの仕事のご紹介や、専門家によって結果が変わってくるような難しい案件も年々増えています。そこで、地道に学び続けてきた知識や経験が発揮されて、苦難の道を超えて結果を出した時に、この仕事をしてきて良かったと心底感じます。
自分だからこそお客様のお役に立てることができた、そのように感じた瞬間は嬉しいものです。
これからの目標とは
___自分がお客様に感謝された時や貢献できたと実感した時に、社会保険労務士としてのやりがいを感じるのですね。そのやりがいは、将来の大きな目標などにもつながっていきそうですが、これからの事業の目標などはあるでしょうか。
現在、開業してから約8年となります。開業10年に向けて大きな変化を感じているところであり、次のステージへ向けて心の準備中です。それまでしばらくの間は、私を成長させてくれているお客さま方へ全力で応えていくことはもちろんのこと、今現在、私についてきてくれているビジネスパートナーを大事に丁寧な時間を積み重ねていきたいと思います。私を支え、応援してくれている身近な周りの人を大切にすることは大前提に。
___そうでしたか。先程の話からも今を積み重ねる大切さは伺いましたが、周りの人を大切にするというは漆原さんにとって重要なのでしょうか。
とても大切です。たとえ、自分の仕事だけ成功しても、私の人生の成功ではありません。大切な人たちとの生活をなおざりにして仕事の成果を出しても、自分にとっての成功ではないのです。
仕事だけでなく家族や大切な人たちと向き合う時間を大切にでき、育児や家事も生活全てをひっくるめて上手くいっているとき、私は幸せだと感じることができます。逆に、仕事の調子だけが良くても、プライベートが手抜きばかりで充実していなければ満たされません。
ライフとワークが、互いに良い影響を与え合あうバランスを保ち続けることは永遠の目標でしょうね。
特に心掛けているのは、子どもにとって最も身近な母親である、私の仕事に対する姿勢やイキイキと働く姿を見せることで、社会性や主体性を日常生活から身につけ、自ら人生のハンドルを握って舵を切ることを楽しめるように育ってほしいということです。
おわりに
取材を終えて、協力していただいた取材にも誠実に対応してくれる漆原さんの人柄が伝わってきました。取材で語ってくださったように、与えられた仕事や挑戦には最善をつくすといった考えが、まさに取材にも表れていました。
特に驚いたのは取材の受け答えだけでなく、この取材への準備でした。この取材に伺う前に、取材の質問一覧などを送らせていただきましたが、質問に対する答えを5~6ページに渡った文章に起こしてくださっていたのです。
そのような何事にも真剣に取り組む漆原さんの今後を応援したいと共に、その姿勢を私たちも見習わなければなりません。