Last Updated on 更新日2020.3.20 by 44@jyuku
坂井宏爾さんは、行政書士でもあり、ビジネスプロデューサーでもあります。
2016年に独立し、行政書士として仕事をしてきましたが、なかなかビジネスを加速できずに模索していました。しかし、様々なことを学び、様々な人と出会うことで自分の適性に気がつき、ビジネスプロデューサーとして仕事を始め、今はビジネスプロデューサーメインで活動をしています。
ここに至るまで、様々な試行錯誤を繰り返した坂井さん。そんな坂井さんの思いや生き様についてお話を伺いました。
ビジネスプロデューサーとは
―肩書の「ビジネスプロデューサー」とは、どんなお仕事ですか。
「ビジネスプロデューサー」とは、起業家やビジネスを始めたばかりの人がビジネスを発展させていくことをお手伝いする仕事です。いい素材やビジネスの種を持っているものの、どうやって売り出したらいいのかがわからない人のお手伝いをしています。例えば、WEBや広告、動画作成などを組み合わせながら、プロモーションのお手伝いをしています。
自分が行政書士として独立したときに、ビジネスの発展の仕方がわからず、ずっと悩んでいた経験を活かして、そのような人に少しでも役立てばと思っています。
―行政書士としてもお仕事をしているのでしょうか。
もちろん、行政書士としてもお仕事をしています。積極的に営業はしていませんが、知り合いから頼まれたりしたときに仕事をしています。現在、事務所がある世田谷区の行政書士会の世田谷支部の理事もしており、行政書士の活発な活動の支援もしています。
テレビ番組制作の世界から行政書士の道へ
―そもそも、なぜ行政書士として独立されたのでしょうか。
行政書士として独立する前は、20年間以上、テレビ番組の制作をしていました。制作に携わった代表的な番組は、「たけし・逸見の平成教育委員会」「巨泉の使えない英語」「オーラの泉」「FNSスーパーニュース」などです。
一方、そのころ、自分が法律をよく知らないばかりに、連帯保証人となり他人の借金を返済する羽目になりました。その経験をしたことで、「法律を知らないで生活しているのは、交通ルールを知らないまま車を運転するようなものだ」と感じ、法律を勉強したいと思うようになりました。
その当時、フリーランスで番組制作をしていたため、繁閑の差があり、時期によっては勉強時間を確保できる環境でした。そのため、どうせ勉強するなら資格を取ろうと思って、行政書士の勉強を始めました。
しかし、2015年頃、体調不良のため、テレビ番組制作の仕事を辞めざるを得なくなりました。その時点で行政書士の資格が取得できていたので、そのまま行政書士として独立しました。
―テレビ番組制作とは全く違う業界の行政書士の世界に飛び込む際、不安はありましたか。
不安はもちろんありました。しかし、体調不良に陥ったことで、テレビ局に出入りしたくない、映像を作る仕事は絶対したくないという心境でしたので、業界が違うことはむしろ好都合でした。
家族からは「テレビ関係の仕事をしたら?」と言われましたが、自分自身がその業界に戻る気は全くなかったので、資格を活かして行政書士として独立する道を選びました。
その選択に、あっけらかんとして、支えてもらっている家族には感謝しています。
ビジネス拡大への模索
―行政書士として独立してからはどのように仕事を獲得していったのですか。
行政書士登録をして開業したものの、ビジネス経験がなかったので、ほとんど仕事がなく、たまに知り合いから仕事を頂く程度でした。
当時は相続を中心にやっていきたいと思い、「相続・遺言コンサルタント」を名乗っていましたが、何をやっていいのかさっぱりわかりませんでした。
そのため、とりあえずホームページを作って、SEO対策などを自分なりに勉強して、「世田谷」×「相続」の検索で一番になるように頑張っていました。順位が下がったとしても1ページ目から落ちることはなかったのですが、それでもお客様は一向に来ませんでした。
今であればわかりますが、相続業務の実績があまりない行政書士である自分が相続を中心に仕事をするという戦略自体がそもそも難しかったのです。当時、相続に関する法令が変わったことにより、従来から相続に強い司法書士に加えて税理士も相続案件を受託するようになっていましたから。
―それで、志師塾に通ったのですか。
そうなんです。結局お客様は来ないし、みんな何をやっているのだろうと思い、まずはビジネスの勉強をしなければならないと考えて志師塾に通いました。「士業専門」とうたっているところに魅かれました。
志師塾に通って、体系的なビジネスの作り方を知れたことは、自分にとってとても役立ちました。
しかし、自分のビジネスに直接結びつけることはできませんでした。
―それはなぜですか。
当時、塾長との面談があり、過去の経歴などを話したところ、「相続の遺言ビデオを作ったらよいのではないか」などとアドバイスをもらいました。しかし、当時の自分はテレビ番組の制作の仕事を辞めて1年ほどしか経っておらず、映像の仕事をどうしてもしたくないアレルギー状態だったので、せっかくのアドバイスを「そうですか」と言いながら、納得しきることができず、結局実行できませんでした。
なので、ビジネスの作り方を学んだだけで終わってしまいました。
―志師塾を卒業してからは、どうしたのですか。
色々なアルバイトなどをしていました。例えば、相続に繋がるものがあるのではと思い、保険の電話営業をやりました。また、様々な活用を模索して、宅建士やファイナンシャルプランナーなどの資格も取得しました。
さらに、ビジネスについてもっと学ぼうと、志師塾以外の様々なセミナーにも通いました。
しかし、どれも行政書士の仕事には繋がりませんでした。結局、2年半くらい模索し続けていました。
たどり着いた道
―そこから、ビジネスプロデューサーの道に進んだきっかけはなんですか。
2年半、様々な人と会う中で、過去の経歴を話したところ、映像コンテンツに対するアドバイスが欲しいという話をたまにいただくようになりました。自分としてはそんなには乗り気ではないけれど、でも自分が普通に話す事が普通の人にとっては役立つということに気づいてすごい驚き、だんだん映像に対するアレルギーも薄れてきたこともあって、たまに受けるようになったのです。
そんな中で、いい素材やビジネスの種を持っているものの、どうやって売り出したらいいのかがわからない人がそれなりにたくさんいることがわかり、自分の映像に関するスキルや、テレビ番組制作で培ってきたスキルが生かせるのではないかと気が付きました。テレビ番組制作ではタレントなどの出演者のモチベーションをあげたり、気持ちよく仕事をしてもらうスキルや、現場との調整能力などが必要です。その調整能力は、ビジネスをプロデュースする際に周りと協業したりする場合には、そのまま活かせるスキルです。
テレビ番組制作自体は嫌になったのですが、結局20年以上の職務経験は、自分の身になり、得意なことになっていたことに気が付きました。
そのスキルと自分がビジネスを始めた時に悩んだ経験などを活かして、これから起業する人たちやビジネスを加速したい人達のお手伝いをするようになりました。
―具体的にはどのようにお手伝いをしているのですか。
例えば、昨年、2019年秋に支援させていただいたのは、睡眠コンサルタントのスタートアップの方です。過去の経験を活かしてプロモーション動画を撮影・編集し、さらに、WEBページの作成なども行いました。その結果、1か月半のお手伝いで約100万円の売上を上げることができました。ゼロから出発する方の場合は資金があまり潤沢ではないので、このように自分が動画撮影・編集をすることが多いです。また、パーソナルトレーナーの方も同じように支援させていただき、約150万円の売上をあげることができました。
その後、スピリチュアル系の講座をすでに始めている方の支援もさせていただきました。私自身が2005年~2009年に放送されていたスピリチュアルトーク番組「オーラの泉」を担当していた経験があったことから、プロモーション動画に自分も出演しました。すでに事業を始めている方向けのプロモーションでは、よりクオリティをあげるために動画作成を外注したり、ネット広告を組み合わせて活用するなど、さらに幅広いお手伝いをしています。この支援では、約1,000万円の売上をあげることができました。
将来の夢
―今後、自分のビジネスをどう発展させていきたいと考えていますか。
どうやってビジネスを進めていいかわからない人やスタートしたばかりの方がビジネスを発展させていくお手伝いをどんどんしていきたいです。今後の構想ややりたいことはたくさんありますが、自分のできる範囲は限られるので、まずはこの1年、実績を積み上げていき、ビジネスの基盤を確立することを目指しています。なぜなら、今はほとんど全部、自分一人でやってるので、リソースに限界があるんです。
自分がこれをやりたい、あれもやりたいと、頭の中のアイデアはいっぱいあって、それを具体化する方法もある程度わかってはいるのですが、今の自分の状態ではリソースの問題でそれができません。
新しいことに取り組む際には特に労力をかけなければならないので、まずは今のビジネスの基盤を確立して、さらに、周りの人々を巻き込んで、お金も投資していくことで、新しいことにも労力をかけてビジネスを拡大させられるような状態にしたいと考えています。
―行政書士としては今後どうしていきたいと考えていますか。
行政書士としては、現状維持と考えています。本来であれば、行政書士の仕事も奥深くて、やれることもたくさんあるんでしょうけど、自分は最初にその道を見つけ出すことができず、結果的に行政書士としてのビジネスを大きく拡大することができませんでした。行政書士の仕事は今まで通り続けていきたいと思っていますが、メインはビジネスプロデューサーとして頑張っていきたいと思っています。
―他に、今後やりたいことはありますか。
実は、志師塾のアンバサダーに任命されました。志師塾のよいところの一つは卒業生のコミュニティがあることだと思います。卒業生同志の繋がりが強く、お互いに仕事を紹介しあったりする仲の人たちもたくさんいます。アンバサダーは志師塾の卒業生のコミュニティをさらに活性化する使命もありますので、それに向けて何かしていきたいなとは思っています。とはいえ、自分は模索している時期に志師塾以外のセミナーにも参加していたことから、それぞれがビジネスを拡大していくためには、卒業生コミュニティに留まるのではなく、外へ発信していく重要性も感じています。
自分が長く悩んだからこそ、ビジネスを拡大する悩みがよくわかります。
今後は、志師塾の卒業生に対しても、それ以外の起業家たちに対しても、世の中に素晴らしいサービスや商品を送り出していくためのお手伝いをどんどんしていくことが願いです。
文:那須 美紗子(中小企業診断士)/編集:志師塾「先生ビジネス百科」編集部