「誰もが働くを楽しめる社会」を実現するために、10回目の転職で起業 ~あさみコンサルティング 代表 森田昇さん

Last Updated on 更新日2019.5.13 by 44@jyuku

あさみコンサルティング代表 森田昇さんは、ITエンジニアとして9回の転職と20件以上の客先常駐プロジェクト、さらには事業会社の取締役副社長も経験しました。2016年に中小企業診断士の資格を取得し、10回目の転職を機にご自身で事業主として独立。現在は【誰もが働くを楽しめる社会の実現】をミッションとし、「下請けIT企業の離職率を劇的に改善させる中小企業診断士・キャリアコンサルタント」として活躍されています。
今回、志師塾の卒業生でもある森田さんに、現在のお仕事やそこに至る経緯、志師塾との出会い、今後の展望などを伺いました。

この記事の目次

現在のお仕事:下請けIT企業の離職率を劇的に改善させるための伝道師

現在のお仕事について教えてください。

個人事業主として「あさみコンサルティング」を立ち上げ、代表を務めています。業務内容としては、中小の下請けIT企業を対象とした離職率改善セミナーの企画運営、研修講師、個別コンサルティングなどです。
ホームページ上にブログを掲載しており、興味を持っていただいた中小企業経営者や人事担当者に、セミナーをお申込いただいています。そこでさらに話が進んだお客様から、研修講師や個別コンサルティングのお引き合いをいただくような流れです。

下請けIT企業に特化されているのですね。ブログやセミナーの内容はどのようなものでしょうか。

ブログは「【脱SES(※)】ブログ」というものです。二次請け以降のIT企業経営者や人事担当者が、明るい未来を社員に見せられるようになるために考えるべきポイントを綴っています。セミナーも現在、SESに頼る二次請け以降のIT企業に特化して「離職率を劇的に改善させる3つのポイントセミナー」というタイトルで月1回程度開催しています。
(※)SES:【System Engineering Service】の略で、業務委託契約の一種。「派遣契約」と非常によく似た契約形態で、受託元の指揮命令系統のまま、発注元である客先に常駐してサービスを提供するもの。

【脱SES】ブログ
https://www.asami-consulting.jp/blog/”

まさに離職率改善の伝道師ですね。研修講師としてはどのような内容をされているのでしょうか。

大きく2つのテーマで研修を行っています。1つ目は、管理職向けの研修で、リーダーの心構え、チームビルディング、コミュニケーションなどを教えています。そして2つ目は、エンジニア向けの研修で、プレゼンテーション、交渉、セールスなどを教えています。客先に常駐しているエンジニアこそ、その立場を営業活動に活かすことができれば常駐先での仕事を広げられるという考えがあります。

社会人としての経緯:幾多の転職と修羅場の経験から、自らのミッションを見つめる

森田さんのホームページにある略歴を拝読して、「9回の転職と20件以上の客先常駐」というところに非常に興味を持ったのですが、社会人としてはどのように過ごされてきたのでしょうか。

大学生の時に就活を行い、出版社に内定していましたが、時代はITだ!と思い立ってシフトチェンジし、1社目は3000人規模のIT人材派遣会社に就職しました。そこは今でいう「ブラック企業」で、72時間連続勤務を経験したり、同僚がうつや過労で倒れたりして、年600人ほどが退職する過酷な職場でした。
このままではいけないと思い転職した2社目は、40名ほどの小規模ソフトウェア開発会社でした。そこでは社長の方針にどうしても賛同できず、1.5か月ほどで退職しました。
3社目は5名ほどのITサービス会社です。社長と従業員の関係性が崩壊しており、3か月ほどで見切りをつけました。
そして4社目は300名ほどの中規模エンジニア会社でした。そこには長く在籍し、現場常駐を多く経験しました。非常によい会社でしたが、5年目に大規模派遣会社に買収されて図らずも5社目となりました。そしてほどなく別会社に転籍となり6社目となりました。

その後「20人規模の中小企業で取締役副社長に就任」とありました。これにはどのような経緯があったのでしょうか?

多くの会社と常駐先に携わることで、インフラからアプリまで幅広く経験をしていましたが、どれも誇れるようなスキルにはなりませんでした。徐々に技術者としてよりも管理者・経営者としてのキャリアに興味を持つようになり、独学で経営理論・マネジメントスキルを学び始めていました。
そのさなかの2008年頃、20名程度の電設資材卸売業に取締役副社長として就任することになりました。これが私の7社目です。実はそこは兄が社長を務める会社でして、親からの誘いによる、いわゆる「家業」でした。兄の右腕としてITシステム導入や社内制度改革、財務経理、新規取引先開拓など何でもやりました。電設資材卸売業というのは、建設業がある限り必ず需要がある業界です。一方で取扱商品は各社共通しているため、差別化できる要素は非常に限られています。このため、いかに地場に浸透して在庫を抱え、短納期で資材を納められるかという勝負になります。必然的に、粗利率が非常に薄いビジネスモデルでした。

実際に経営者の立場になり、どのようなことがあったのでしょうか?

売上高10億円を目標に、経営全般を執り行ってきました。就任してしばらくは順調だったものの、その後社内のコミュニケーション不足により売掛金2000万の取引先に夜逃げされてしまったり、業務提携先の営業代行会社と裁判沙汰になったりと、正直苦しい日々が続きました。そして2011年、東日本大震災が起きました。当時の会社は関東に3拠点を擁していましたが、震災の結果、関東の建設工事はみなストップしました。そして電設資材のほとんどが東北地方に向かうことになりました。卸先とも仕入先とも取引がストップしてしまい、ギリギリの資金繰りを何度も経験しました。会社を立て直すために融資を受け、泣く泣く社員の約半数をリストラしまして、最後には自分自身が責任を取る形で退職しました。2011年秋頃のことです。
兄とはそれ以来疎遠になっていましたが、2018年になってようやくあの頃のことを笑って話せる関係に戻ることができました。兄の会社は現在も続いており、順調に業績を伸ばしています。

まさに「修羅場」を数多くご経験されてきたのですね。その後はどのような経験をされたのでしょうか?

2012年頃にIT業界に戻り、再び客先常駐の日々が始まりました。経営に携わった経験が生き、チームビルディングによって客先の生産性を向上させることに成功しました。マネージャーにも昇格しました。ようやく「過去の自分を救う」ことができたのです。
そして、「転職の繰り返しによって身につけた知識と経験を体系化したい」という思いと、「IT業界の下請け会社を変えることで、キャリアに悩むエンジニアを救いたい」という想いの両面から、これまでの経験と親和性の高い中小企業診断士に挑戦し、2016年に資格を取得しました。

独立に至った経緯と独立後の活動

中小企業診断士となったことで、ご自身のお仕事にも変化があったのでしょうか?

はい。資格試験予備校の専任講師となり、さらに複数の大学からも非常勤講師のお話を頂きました。IT企業に勤めていたのですが、大学講師との兼務は会社の規定上難しいため、それならばということで退職を選びました。
そして10回目の転職では自分で事業を興すことにし、2017年5月に独立しました。国家資格であるキャリアコンサルタントの資格も取得し、「下請けIT企業の離職率を劇的に改善させる中小企業診断士・キャリアコンサルタント」として活動を始めました。

離職率改善というテーマですが、具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?

ご相談の入口として、ブログやセミナー等で「離職率改善3つのポイント」をお伝えしています。離職率を改善し、社員が成長していける環境、すなわち健全な組織文化・風土を育むための「特効薬」のようなものです。
1つ目は「経営理念の浸透」を図ること。会社の魂ともいうべき経営理念の浸透があって初めて、社員は同じ方向を向いてコミュニケーションすることができるようになります。
2つ目は「コミュニケーションの促進」です。職場においては受容的な態度を前提に、伝達(自分の意思や考えを相手に伝える)と傾聴(相手が伝えようとしている内容を正確に受け取る)を駆使することが重要です。コミュニケーションが促進されていけば、個人の目標を会社の方向性に合わせていくことができるようになります。
3つ目は「個人目標の設定」です。将来なりたい自分や、理想の自分を自ら考え設定し、それが経営理念と合致していれば、おのずと社員の成長が会社の成長とリンクしていくことになります。
これら3つのポイントをピラミッドのように順番に構築していくことが離職率改善のためには非常に重要です。なにより経営者が社員を大切にする姿勢を見せ、健全な経営を行う企業こそが、この空前の人手不足の時代に生き残っていけると考えています。

森田さんの今後の活動とも重なる質問ですが、離職率改善の先にはどのようなテーマがありますか?

離職率改善による「社員が辞めない会社」というのは、あくまでも会社の成長のための1つのステージにすぎません。社員が辞めない会社であれば、客先に派遣するエンジニアの単価が上がり、社内の技術力も向上します。結果的に売上が伸びていき、自社ブランドを確立できるようになっていきます。
私自身の支援範囲も、フロントエンドのメインは離職率改善ですが、採用をテーマにしたセミナーも企画しています。集客にあたっては志師塾での学びが大いに役立っています。

志師塾で得たものと今後の展望

森田さんは2017年に志師塾の「Web集客講座」に入塾して学ばれたようですが、きっかけにはどのようなことがあったのでしょうか?

2つあります。1つ目は、中小企業診断士の先輩であり、以前からブログを拝読していた福島美穂さんが志師塾で講師をされていたためです。追っかけのような形になりました(笑い)。2つ目は、独立の前後に先生業のための塾やセミナーを30か所ほど回ったのですが、その中でも、志師塾はノウハウがしっかりと言語化・体系化されており、再現性が高いと感じたためです。実際に学んでみて、ブログからセミナー開催、そして個別の研修やコンサルティングに繋げるための導線をしっかりと意識して営業活動を行えるようになりました。

(参考)【講師インタビュー】制限があるからこそ、伸びることができる~福島美穂~
https://sensei-biz.com/mihofukushima/

これまでのご経験と志師塾での学びが結びついて、現在のご活躍に繋がっているのですね。森田さんご自身の展望として、今後、どのような活動をしていきたいと考えていますか?

2020年まで、中小の下請けIT企業が離職率改善できるように貢献していきます。そしてその先に、キャリアコンサルタントとしての経験も深めたうえで、エンジニアがより楽しめるような企業研修を一層充実させていきたいと考えています。これだけの転職経験を持つ人間はなかなかいないですし、経営者目線と従業員目線を融合できることが、自分の強みであり価値だと思っていますので。

最後に、森田さんのミッションでもある「誰もが働くを楽しめる社会の実現」とは、どのようなものでしょうか?

働くことは人生そのものである、と考えています。誰もが働くことを楽しめれば、会う人や見える世界が変わり、人生が変わります。私は今、働くことを心から楽しめていますが、過去の転職経験の中では、そうではないときがありました。「誰もが働くを楽しめる社会」を実現することは、これからの日本のためでもあり、働くことを楽しめていなかった過去の自分を救うことにも繋がると思っています。

文:北村 和久(中小企業診断士)/編集:志師塾「先生ビジネス百科」編集部

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