Last Updated on 更新日2019.4.28 by 44@jyuku
「コーチングは人生を豊かにするスキルだと思うので、それをどんどん伝えていきたいですね。」
組織変革やリーダーシップ等を専門とするエグゼクティブ・コーチ兼コンサルタントとして活躍する、志師塾「Web集客セミナー」卒業生の國武大紀さん(株式会社Link of Generation 代表取締役)は、笑顔で語ります。
大手銀行からJICA・外務省という経歴、海外にも留学して組織心理学の修士号を取得し、2018年12月に出版した2冊目の著書が早くも3版、と一見順調なキャリアにみえる國武さんですが、今までの人生は挫折や悩みを努力と縁で乗り越えたものでした。
コーチングとの出会いをはじめとした今までの人生や志師塾で学んだこと、将来実現したい夢を伺いました。
この記事の目次
エグゼクティブ・コーチ兼組織変革コンサルタントとして活躍
2016年9月より、エグゼクティブ・コーチ兼組織変革コンサルタントとして活動している國武さん。国内外での多種多様なビジネス経験と高い専門性に裏打ちされたコーチングスキルを元に、B to Cおよび B to Bの両面から事業を展開し、マンツーマンのコーチングや組織開発等の企業研修で活躍しています。
「マンツーマンのコーチングでは、経営問題に悩みを抱える経営層に対するエグゼクティブ・コーチング、理想の未来を実現させていくハイパフォーマンス・コーチング、コーチングで独立あるいは副業を目指す人のためのコーチング起業支援の3つのプログラムを柱としたコーチング事業を行っています」
意外にも、コーチングについては聞いたことがあるものの、実際には知らない方がほとんどで、体験してその効果や素晴らしさに驚く方が多いそうです。
また、組織変革に関するコンサルティング事業では、海外の大学院で学んだ組織心理学を活かし、管理職のリーダーシップに問題を抱える企業やチームワークが発揮できず、生産性が低下している企業等に対して、研修を通じた組織開発の支援をしています。
社会人デビュー、いきなりの挫折
大学では国際関係の勉強をしており、外交官を目指していた國武さん。
「親に頼んで1年留年しましたが、勉強中に阪神大震災に被災しました。震源地の近くに住んでいたので、死ぬ思いをしましたね。震災の影響で勉強を中断せざるを得ず、残念ながら合格できませんでした」
夢は叶わなかったものの、就職活動の結果、大手銀行への入行が決まります。
「親に金銭面で苦労を掛けたので、親孝行をしたいと思いました。また、銀行は“経済の血液”と呼ばれており、公共性も高い点に惹かれました」
入行後、都内の支店に配属されましたが、早速社会の洗礼を受けます。
「銀行特有の同調圧力の強い組織風土に馴染めませんでした。管理も厳格で、上司や先輩からのきつい言葉に耐えられませんでした。性格的に真面目なので、受け流せなかったんです」
そんなある日、國武さんは友人と会食後、新宿の道端で倒れ込んでしまいます。
「過労のストレスが原因でした。病院のベッドで行員生活を振り返り、職場に尊敬できる人がほとんどいないと感じていたことに気が付きました。僕の価値観として、“ロールモデルが多くいる組織ほど良い組織”と考えていたので、“これ以上銀行に残る意味がない”と思い、退職を決意しました」
“前途洋々”なはずの行員生活を1年半で終え、いきなりの挫折を経験します。
合格倍率50倍、奇跡のJICA社会人採用
銀行退職後、バーテンダーや土木作業員を経験し、実家の滋賀県に戻ってからは英語塾の講師をしていた國武さん。そこから努力と縁で第2の人生を掴みます。
「大学生時代のゼミの同級生がJICAに新卒で入社しており、偶然話す機会がありました。そこでJICAの社会人採用を紹介されました。JICAのことを詳しく知らず、締切まで1週間しかありませんでしたが、何とか間に合わせました」
合格倍率約50倍以上、4次審査の難関で、合格できるとは思わなかったといいますが、奇跡の社会人採用合格を果たします。そのきっかけは、國武さんが悩みを克服しようとする中で出会った心理学でした。
「初めて心理学に触れて、自分の内面を理解する大切さを知りました。書類審査の小論文では、“国際協力における心の教育の必要性”をテーマとして書きましたが、それが評価されたそうで、人事の方からも“面白い発想だ”と入社後に言われました」
JICAに強い縁を感じ、「救ってもらえた」という國武さん。銀行退職の経験から、当初は「組織に馴染めるか」不安だったそうですが、結果的に10年間で5つの部署を経験する等、実力を存分に発揮されます。
そして、難関の社内公募に応募・合格し、ノーベル賞受賞者を数多く輩出しているLSE(ロンドン政治経済大学院)への海外留学を果たします。
コーチングで「総スカン」を克服
LSEでは興味のあった組織心理学の修士号を取得し、意気揚々と帰国しましたが、20人の部下を抱える部署に配属された國武さんを厳しい現実が襲います。
「リーダーシップやチームワークを学んだにもかかわらず、部下から総スカンを受けてしまいました。理論を振りかざし過ぎ、逆に関係性が悪くなったんですね。さすがに自信喪失し、辞職しようと真剣に悩みました」
苦しんでいた國武さんですが、ここでコーチングと出会います。
「“使えるコミュニケーション”のスキルを習得したいと考え、学び始めた結果、仕事のパフォーマンスが急激に上がったんです。コーチングを通じて、コミュニケーションスタイルが「話す」→「聞く(傾聴)」に変わったことで、人望も集まり、働きやすい環境を作れるようになりました」
その結果、上司・部下との関係も良くなり、上手くいかなかった仕事でも活躍できるようになったといいます。結果が認められたのか、JICAの本部に異動し、労働組合の委員長に抜擢されます。
悩んだ末に外務省へ出向
JICAの労働組合委員長時代は、東日本大震災直後の大変な時期でしたが、経営陣と職員の関係を改善させるため、若手職員との勉強会や全役員との座談会を提案し、実現させます。
労働組合委員長としての実績を認められたためか、外務省への出向の話が持ち上がります。当時の國武さんにとって、まさに青天の霹靂でした。
「大学生時代は外交官志望でしたが、実はその頃には希望していませんでした。出向先で担当するOECDも当時所属していた部署で担当していたため、“また同じような仕事をやるのか”と悩みました」
結果的に、赴任を決めたのは「一生に一度できるかどうか」の仕事であったことと「国家レベルでの仕事を知りたい」と考えたことが理由でした。
「“自分が役に立てるならやってみたい”と思い直しました。赴任先がパリで家族も同行できるので、出向することにしました」
独立への助走期間
外務省出向中、國武さんにJICAを紹介してくれた大学生時代の同級生が病気で他界してしまいました。それをきっかけに、「今、自分がやりたいことを本当にやれているのか」と自分の人生を真剣に考えるようになったといいます。
「コーチングをずっとやっていたので、コーチとして独立したいと思い始めました。僕自身、コーチングの恩恵を受けているので、“こんな素晴らしい仕事で世の中に貢献できれば良いな”と感じていました」
但し、当時は外務省出向中でパリに住んでおり、独立起業の準備をする時間もなかったため、独立するかどうか悩んだそうです。そこでパリにいる間に1年半コーチを付け、独立に向けた助走を行いました。
「コーチになると決める際、“自分よりも2~3年先を進んでいる人(ロールモデル)”を探しました。いきなり10年先を走っている大ベテランのコーチからコーチングを受けても、“できる”という感覚が持てないからです。そこで自分に合うコーチを見つけ、サポートしてもらえたことが良かったです」
“誰をロールモデルにするか”によって、成長スピードが決まってしまうため、ご自身の判断基準と直感を元に判断して良かったと振り返ります。
志師塾との出会い
こうして独立を果たした國武さんでしたが、当初はリアル中心の集客のみであったため、Web集客の必要性を考え始めました。そこで当時、知り合いの人から志師塾を紹介されます。
志師塾を全く知らず、偵察目的でセミナーに参加しましたが、講師の浪間亮さんの話に引き込まれ、2018年1~3月の「Web構築セミナー」受講を決意します。
「セミナーの内容が素晴らしく、(浪間)亮さんのストーリーや人柄に惹かれたことが受講を決める大きな要因でした。“この人から学びたい!”と思い、人で決めました」
既に2017年6月に『評価の基準』(日本能率協会マネジメントセンター)を出版していた國武さんでしたが、「わかったと思ったら終わり」との起業時の恩師の言葉を大切にし、必死に取り組みました。
「もちろん、既に知っていることもありましたが、理解が浅い部分や誤解していた部分もあり、そこに気づいて学べてとても良かったです」
先生や仲間との縁があったから~志師塾で学べたこと~
志師塾には情熱的な仲間が集まっており、多くの刺激を受けたそうです。
「仲間とは素晴らしいご縁で結ばれていたと思います。ノウハウも重要ですが、結局はマインドセットが8~9割だと思うんです。マインドセットは理屈でなく、感情の部分。感情が行動を生み出す原動力なんですね。そして、人と人とのつながりによって、場の力が生まれる。その場の力がマインドセットに大きな影響を与えて、学びや成長を加速させてくれました。本当に素晴らしい環境でした」
また、自己棚卸を通じて、様々な気づきがあったといいます。
「自己理解が深まり、Webを使っていかに自分のポジションを取るかを徹底的に考えられました。“自分の強みは何か”“やりたいことが市場のニーズに基づいているのか”を調べ、講師や仲間から指摘を頂けるのが貴重でした」
自分でも知らないことに気づき、國武さんが事業を進める上でのポジショニングも明確にできました。また、考えるプロセスを踏むことで、今後新たなコンテンツを作る際にポジショニングを見直す術を身に付けられたといいます。
「僕自身がとことん向き合い、(浪間)亮さんにもとことん付き合っていただけました。Web集客やポジショニングだけでなく、志師塾で学んだスキルがコーチングやコンサルティングでも活かせています」
提供できる考え方が広がり、お客様にも更に喜ばれるようになったそうです。
“國武さんだからこそ”できること
コーチングは資格がなくても専門家を名乗れるため、参入障壁が低いと言われています。その中で、“國武さんだからこそ”できることは何でしょうか。
「今までの人生で数多くの挫折を経験したり、世界各国で多様な価値観を持つ人々と接してきたりしたことが大きな強みです。人の心の“痛み”もよりわかるし、色んな事情を抱えるクライアントを受け入れ、共感し、寄り添い、受け止められるのは、僕のコーチングの特徴だと思います」
挫折を乗り越えてきたからこそ、「やればできる!」と伝えられるといいます。
スキル面でも、コーチングの中にLSEへの留学で習得した組織心理学の要素を組み合わせています。
「個人の心理だけでなく、組織(個の集団)の心理がわかることが強みですね。集団心理やチームワーク、リーダーシップ等についても専門性を持っています。、また、組織心理の背景を理解しながら個人あるいはグループに対してコーチングを提供できます」
また、2018年12月に出版した2冊目の著書『聞く力こそが最強の武器である』(フォレスト出版)が早くも3版と評判です。「聞く力」がなぜ必要か、どう養うのかをわかりやすく解説しています。
豊富な経験からくる“寄り添う”スタンスと個人・組織の双方の心理に精通しているスキル、そして「聞く力」、これが“國武さんだからこそ”できることの源泉です。
身近な人や地域、途上国をコーチングスキルで良くしたい
最後にコーチングを通じて実現したい世界観を國武さんに聞いてみました。
「まずはコーチングの素晴らしさを身近な人から地域のコミュニティも含めて伝えたいですね。コーチングは、人の学びや成長を飛躍させ、人生をより豊かにしてくれる無限の可能性を秘めたコミュニケーション手法です。コーチングを企業の中に取り入れるだけでも、企業の業績あるいは職場の人間関係の改善に大きな影響を与えることが可能です」
また、現在の事業が発展してからの夢があります。それはコーチングを通じて、日本の地域社会や途上国の発展に貢献することです。JICAで培った途上国支援の経験を活かしたいと語ります。
「JICA には、かつて“人づくり 国づくり 心のふれあい”というキャッチフレーズがあり、今でも僕のビジョンの拠所です。“国づくり”は国家レベルの話ですが、“人づくり”“心のふれあい”は今の仕事の根幹となる部分です。将来、これまでの全ての経験を活かし、国際協力の分野でも貢献したいです」
AIやIoTといった技術が進化する時代だからこそ、絆を大切にしたい。その想いを胸に、國武さんの挑戦は続きます。
文:水戸脩平(中小企業診断士)/編集:志師塾「先生ビジネス百科」編集部