カウンセラーとして副業・兼業は可能か?

Last Updated on 更新日2021.9.9 by 川口 翔平

近年、副業・兼業の解禁の流れの中で、収入アップやスキルアップを目的に「私も副業・兼業してみたい」とお考えの方も増えてきているのではないかと思います。

産業カウンセラーやキャリアコンサルタント等、カウンセリングの資格を取得している方、特に取得したての方にとっては、「取得した資格を早く活かしたい」「スキルを世の中に役立てたい」「スキルを使って稼ぎたい」との思いを強く持たれているのではないでしょうか。「本業を辞めたくない」「収入面が心配」等の理由で、副業・兼業を検討されている方も多いと思われます。

そこで本稿では、カウンセラーとして副業・兼業を行うことは可能かどうか、実例も踏まえて述べていきます。

副業・兼業を解禁する会社が増加

2018年は、「副業・兼業解禁元年」と言われた年でした。厚生労働省からは、2018年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が出されました。また、「モデル就業規則」の労働者の遵守事項を改定し、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定が削除され、副業・兼業についての規定が新設されました。

それに伴い、副業・兼業を解禁する会社が増えています。従来から認めていたリクルートやサイボウズのようなサービス・IT系の企業に加え、富士通や花王、ロート製薬といった大企業も副業・兼業を解禁すると公表しています。

カウンセラーの資格・スキルを持つ企業勤務の方にとっても、副業・兼業解禁の流れを受けて、「自分も副業・兼業としてカウンセラーの活動をしたい」と考え始めるきっかけとなったのではないでしょうか。

そこで本稿では、カウンセラーを取り巻く状況をお伝えした上で、産業カウンセラーやキャリアカウンセラー等のカウンセラーが副業・兼業できる可能性があるかどうかを解説いたします。

カウンセラーを取り巻く現状

社員のメンタルヘルスケアが叫ばれ、キャリアが多様化してきている現在、カウンセリングに対するニーズは高まってきています。一方、カウンセラーは産業カウンセラーやキャリアコンサルタント等の資格がなくても名乗れるため、参入障壁が低いです。

しかしながら、カウンセラーの資格試験で学習する「傾聴」スキルは、本業または副業・兼業問わず、カウンセラーとして活動する上で欠かせないものとなります。

「傾聴」スキルを習得することで、相手の方の言葉や考えを引き出すスキルを高められます。「答えは相手の中にある」との考えを身に付けられ、カウンセラーとしての技術が磨かれます。

よってカウンセラーは参入障壁こそ低いものの、カウンセリングのニーズは高まってきており、加えてカウンセラーの勉強で習得した「傾聴」スキルを活かすことができれば、本業のみならず、副業・兼業でも十分に活動していける余地があるといえます。

実際にはどうなのか、産業カウンセラー・キャリアコンサルタント資格を持つ方の2つの事例をみていきましょう。

カウンセラーとして副業・兼業は可能か?~産業カウンセラーの場合~

産業カウンセラー」は、2001年までは国家資格だったため、カウンセラーの中では知名度が高い資格です。

合格率(65.7%、2017年度試験)は高いですが、大学または大学院で心理学を専攻しているか、日本産業カウンセラー協会主催の「産業カウンセラー養成講座」(2018年度通信制講座の場合、226,800円)を受講するかのどちらかを満たすことが受験要件のため、受講~副業・兼業までのハードルは少なからずあります。

では、産業カウンセラーとして、副業・兼業を行うことは可能でしょうか。産業カウンセラー資格を保有し、活動しているAさんにお話を伺いました。

Aさんによると、産業カウンセラーとして活動できる範囲は近年広がっているようです。

・ストレスチェック制度が従業員50人以上の会社で義務化され、従業員支援プログラム(EAP)も広がってきているため、資格の認知度は確実に向上している
・以前に比べ、カウンセリングの心理的ハードルも下がっている
・副業・兼業として、EAPの導入支援やカウンセリングをしている方もいる

産業カウンセラーを生かし、女性起業家サポーターとして活躍する福島美穂さんの記事はこちら

一方で、カウンセリングの需要は存在するものの、副業・兼業として成立させるには、依然として以下のようなハードルがあるといいます。

・希望者とのマッチングが難しい
・時間的な制約が生じるため、副業・兼業の場合は丁寧なサービスは行いにくい
・カウンセラーと受ける側の相性が大きいため、トライアルが必要 (副業・兼業の場合は負担が大きい)
・副業・兼業の場合、単価が安くなる傾向がある

産業カウンセラーの副業・兼業で直ちに稼げるとまでは断言できませんが、収入アップを第一に考えない場合は、「ココナラ」をはじめとしたスキルマッチングサービスを活用し、マッチングしたお相手に接することでスキルアップを図ることはできるそうです。

スキルアップを主目的にすると、産業カウンセラーで副業・兼業は可能でしょう。

カウンセラーとして副業・兼業は可能か?~キャリアカウンセラーの場合~

では、産業カウンセラー以外の資格の場合はどうでしょうか。

キャリア領域のカウンセラーのうち、「キャリアコンサルタント」は、学生や社会人等を対象に、能力開発・職業選択の助言を行うカウンセラーであり、2016年から国家資格になり、知名度が高まっている資格です。

キャリアカウンセラーとしての副業・兼業の可能性について、資格を保有して活動しているBさんにお話を伺いました。

国家資格となったことが追い風になっており、キャリアカウンセラー、特にキャリアコンサルタント資格を持つ方にとって、カウンセラーとして活動できる範囲は近年広がっているようです。背景として、以下の社会状況から、国が「自立したキャリア形成」を求めていることが挙げられます。

・これまでは個人のキャリア形成は会社(組織)が担ってきたが、現在は労働力が流動的であり、女性やシニア等、そのキャリア形成が個別化している
・景気の変動や技術革新により、消える職業・新しく生まれる職業など、キャリアを取り巻く環境の変化が激しい
・会社や組織に頼らない、個別のキャリア形成が必要である
・働き方改革が叫ばれ、採用面や入社後の働き方についても多様化が求められている

その中で、キャリア形成について個人が自発的に考えて取り組むとともに、それを支援する人材としてキャリアコンサルタント資格保有者を育成することを厚生労働省が政策として取り組んでいます。

Bさんによると、副業・兼業としては、大学のキャリアセンターの契約社員や国が実施しているキャリア支援セミナーでの相談員の仕事が多いそうです。また、以前はリストラされてしまった社会人の再就職支援が多かったのですが、現在はシニア層のニーズに加え、学生の親に対し、学生の就職相談を行うケースが増えているといいます。

一方で、先述のとおり、カウンセラーは参入障壁が低く、本業でキャリアカウンセラーを営む競合が多く存在するため、競争に勝ち抜くだけのスキルが求められます。

しかしながら、キャリアカウンセラーもスキルアップを第一に考えれば、仕事のニーズそのものは増加しているため、社会人または学生の個別のニーズに的確に対応することにより、副業・兼業は可能と言えるでしょう。

まとめ

副業・兼業解禁の流れが強くなっていることに加え、カウンセリングのニーズが高まっていることが追い風になり、カウンセラーとしての副業・兼業が実現する可能性は高まっているといえます。

但し、カウンセラーは資格がなくても名乗れるため、参入障壁が低く、本業のカウンセラーとの競争も非常に激しいです。加えて、副業・兼業の場合は単価が安くなるケースもあり、収入アップを主目的にしている場合は活動工数に見合わない可能性もあります。

そこでカウンセラーを副業・兼業で行うことによるスキルアップを主目的に置くことも考えられます。スキルマッチングサービスの普及により、以前に比べると案件獲得のハードルも下がっており、機会も増加しています。

カウンセラーの副業・兼業によるスキルアップが本業での成果につながり、間接的に収入アップにつながることもあり得るため、カウンセラーのスキルを保有している方は、副業・兼業で取り組むことを考えても良いでしょう。

文:水戸脩平(中小企業診断士)/編集:志師塾「先生ビジネス百科」編集部

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