問題解決の基準のない介護現場で高齢者を守る弁護士の働き方とは

日本弁護士連合会の統計によると、日本の弁護士の登録数は約3万9,000人。そのうち、個人事務所を運営されているのは約1万人。全体の4分の1弱にあたります。

今回は、日本で初めて介護・福祉系業務に特化した個人法律事務所を設立され、弁護士として活躍されている外岡潤さんにお話を伺いました。外岡さんは「高齢者を守りたい」という明確な使命を持って活動されています。

日本初、介護・福祉系弁護士としての活動

弁護士の先生の皆さまは、ご自身の希望した仕事ができていますか?
人の役に立ちたいと思いながらも、日々の作業や事務処理に追われてしまってはいないでしょうか?

そのような悩みをお持ちの先生は、もしかすると今回の外岡さんのお話が参考になるかもしれません。ポイントは、弁護士だからこの仕事をしなければならない、という固定概念の打破にあります。お話を伺ってみましょう。

―――外岡さんが弁護士を目指された経緯と、今のお仕事内容についてお聞かせください。

漫画『ヘルプマン』を読んで、弁護士という職業に興味を持ちました。直感ですね。

2009年から弁護士のお仕事をスタートしています。

今の仕事内容はセミナーの開催が中心です。裁判と介護にまつわるセミナーが半々ずつくらいで、月に5〜6件開催していますね。
実際、やってみて感じるのは、1人で全てをこなしているため、やはり大変ということですね…。

介護の(金銭トラブル?)の被害者は、ほとんどが利用者、入居者である高齢者側です。高齢者が受け取れるはずのお金が、施設や協会から支払われないといったトラブルがあるんですね。そのとき双方の間に入って調整したり、早い段階でのケアをしたりするように努めております。施設の個別契約に同行したりもしていますね。
本来であれば、老人ホームや介護関連の協会は高齢者やその家族を守ることが一番な現場です。しかし、高齢者の方々が犠牲者になってしまっている実態があるんです。

介護現場で起こるやるせない転倒事故

 
―――外岡さんは介護の現場で、金銭トラブルだけでなく事故によるトラブルの対応もされていらっしゃるんですね?

私は介護・福祉を専門に取り扱っている弁護士ですので、依頼者は高齢者やそのご家族の方です。

事故の相談で非常に多いのが、「転倒事故」ですね。湿った雪で転んでしまうケースも多いのですが、家の中でつまずいて転ばれる場合もあります。高齢者の方にとって、転倒トラブルは、常に身近な問題です。

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事故に対して施設側が高齢者本人者家族の方に謝罪を示さないと、大きな問題へと発展していくわけです。

施設側の事情もあります。「謝ってしまうと、責任が生じるのではないか…。」という懸念が生じからです。

私は、その間を調整したいと思いました。
よく問題になるのが、介護現場にはトラブル解決のための「基準」がないということです。

具体例を挙げます。
老人ホームに入居中のAさんは、夜中トイレに行きたくなりました。通常なら、ナースコールを押して、スタッフの方と一緒にトイレへ行きます。しかし、その日は押してもナースコールが鳴りませんでした。仕方なく一人でトイレに行こうとした際に、Aさんは転倒してしまいました。

責任は誰にあるのでしょうか?
もっと極端な例では、入居中の高齢者の方が交通事故にあってしまった場合でさえ、施設側からドライな対応をされるケースもあります。

もし、介護の現場で事故やトラブルが起こってしまった場合、基本的に保険会社が定めている基準によって賠償問題の対応がなされます。保険会社の基準には細かいケースまでは想定されておらず、解決するための基準が存在しないのが現状です。ですから、私はそういった間を取り持ちたいと考えました。

なるべく裁判に持ち込まない

 
―――解決手段として明確な基準のない介護の現場で、外岡さんはどのようにトラブルを解決されているのですか?

私は極力トラブルを裁判まで持ち込まず、対話による平和的解決を目指しています。裁判って大変なんですよ。、被害者やその家族の方が、施設に責任を取ってもらおうと裁判を起こしても、施設側が責任を逃れようとした場合、責任を立証するのは困難なんです。

そこでメディエーションという解決方法を提示しています。
メディエーションとは、トラブルが起こった当事者双方の間に第三者が介入し、話し合いによって和解や歩み寄りを促す手法のことです。

メディエーションについては毎年、セミナーも実施していますね。私が所属している、てるかいご(一般社団法人、介護トラブル調整センター)で企画・運営しています。

―――メディエーションに関するセミナーとはどのようなものですか?

具体的な例を使って、参加者の方々にメディエーションについて考えてもらっています。

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新幹線座席でのコンセントの使用に関するトラブル例です。
窓側の席に座っていたAさんは、コンセントは窓側の席の人が使うものと思っています。Aさん隣の通路側の席に座っていたBさんは至急の仕事に対応するため、そのコンセントを使ってパソコン作業をしていました。

しかし、Bさんがトイレのために席を2、3分離れていた間に、Aさんがコンセントから勝手にコンセントを抜いていました。Bさんのパソコンは電源が切れてしまい、作業中だったデータは消えてしまいました。

<AさんとBさんの主張>
B:「ちょっと!なに人のパソコンのコード勝手に抜いているんですか!」
A:「勝手はそっちでしょ!見て分からないんですか?コンセントは窓側の席のものですよ。」
B:「そんなルール誰が決めたんですか?今まで空いていたんだから使って当然でしょう。常識のない人ですね!」
A:「それはこっちのセリフです。あなたこそ常識がないんじゃないですか?」

メディエーションの言葉の意味を知っていただくのではなく、セミナー参加者がイメージしやすい状況を設定し、メディエーションがどのような状況で活用できるかを考えてもらうことが重要なのです。
状況を提示した後には、ペアワークでロールプレイングなどを行っています。

適切にメディエーションが行われれば、話し合いによって、当事者間の誤解が解かれ、裁判や大きな問題に発展する前に解決できるのです。

私が弁護士という立場でメディエーションを行うことは、介護現場の被害者の方たちを助けるために大変有効なものとなってきています。

―――裁判になってしまう前に、セミナーを企画したり、メディエーションという手法を用いることによって、介護の現場でのトラブルを減らしたり、未然に解決したりすることを目指されているのですね。

本当に解決したいからこそ

 
―――最後に、外岡さんの介護・福祉系弁護士としての仕事に関する考えをお聞かせいただけますか?

現場では、高齢者とホームの職員の方が、お互いに家族のような関係性を持っておられる場合があります。ちょっとしたトラブルは、家族間では話し合いで解決することが多いでしょう?

介護の世界では、トラブルに対して画一的に法律を用いていくのではなく、法律をどのように共存させていくかが問われているように思います。

私は、なるべく裁判に頼らない方法で、解決を目指しています。食事をとるための道具にナイフとフォークがあるならば、スプーンがあってもいいじゃないか、という考え方です。

権利というのは、みんなが言い出したらキリがないんですよね。譲り合いや、チームワークが大事になってくるのではないでしょうか。通り一遍ではなく、柔軟に対応することを重要視しています。

明確な解決の基準が整っていない介護の現場から、法律に関する文化の多様性を広げていきたいと思っています。

※※※

弁護士といえば裁判と考えてしまいがちですが、介護・福祉系弁護士として外岡さんが実現したかったことは、高齢者やその家族の方々の願いをできるだけ平和的に解決することなんですね。

そうしたスタンスを取られたのは、裁判よりもメディエーションによる話し合いでによって解決を試みた方が高齢者やその家族の方々にとって負担が少なく、解決できる可能性が高いからです。

なるべく裁判に頼らない、積極的にセミナーを開催する、などといった手法で、外岡さんは、「高齢者の方々を守りたい」という使命を実現するために、型にはまらない活動を続けてこられています。

弁護士の先生方は、みなそれぞれ異なる動機や理想を持って、弁護士を志されたことかと思います。志が実現されている先生も、なかなか思い通りにいかないと考えられている先生も、外岡さんの使命に対するスタンスや働き方は参考になるのではないでしょうか?

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