Last Updated on 更新日2019.5.10 by 44@jyuku
社会保険労務士(以下、社労士)の営業活動にはどのようなものがあるでしょうか。税理士など他士業との接点を活かし紹介により顧客を獲得するケース、とにかくたくさん電話しアポイントを取得し顧客を獲得していくケースなど、様々な方法が考えられます。
本稿では様々な社労士の営業活動が存在する中で、実際に効果が見られた「ダイレクトメール(以下、DM)による営業活動」を紹介します。他人からの紹介により顧客を獲得するのではなく、自らの力で顧客を獲得する方法です。また、実践しノウハウを蓄積することで、成約率を高められる方法でもあります。ぜひ、ご参考になれば幸いです。
資格取得だけではだめ?
「せっかく資格を取ったのに、なんで営業活動が必要なの?」資格を取得したばかりの新人社労士からよく聞かれる声です。
社労士は業務独占資格であり、資格を保有していなければ行うことのできない業務が存在します。それゆえ、資格取得さえできれば、仕事を受注できるのではないかと考えてしまうのも無理はありません。
しかし、業務独占資格であるがゆえに、他の社労士と業務内容での差別化が難しく、価格面で妥協したり、受注できなかったりといったことが発生しやすくもあります。
また、同じ社労士でも、仕事をたくさん受注している社労士もいれば、思い通りにいかない社労士も存在します。この受注力の差には、社労士としての営業活動の差が関係しているのです。
社労士としての営業活動の方法
社労士の営業活動で代表的なものとして、(1)税理士など他士業との接点を活かし、企業に対してアプローチする方法、(2)電話などによりたくさんアポイントを取得し、顧問契約を勝ち取るといった、いわゆるプッシュ型の営業活動、そして本稿でご紹介する(3)DMによる営業活動が挙げられます。
まず(1)の他士業との接点を活かす方法では、他士業との交流会などに積極的に参加し、人脈を広げることになります。その際のポイントは、他の社労士との差別化につながる自分自身の特徴が何なのかをイメージすることです。具体的には、得意分野や、これまでの業務経験を活かした提供可能なサービスのPRを準備します。
次に(2)のプッシュ型の営業活動では、アポイントを取得するまでが大変です。どのようなトークをした時にうまくいったのか、逆にうまくいかなかったときには何が改善点として考えられるのか、振り返りながら取り組むことで成功確率を高めていくことが大切です。
何れの方法も社労士として立派な営業活動ですが、本稿ではより戦略的な営業活動につながりやすい(3)のDMによる営業方法を紹介します。
ダイレクトメールによる営業活動
「まさかこの方法がヒットするとは思わなかった」
実際にDM営業を実践し、成果につながり始めている社労士が、同期の社労士から言われたセリフです。
この方法では、DMに反応のあった企業に対してアプローチを進めますが、DMに対して「反応がある」ということは、こちら側のサービス内容に対する「ニーズがある」ということになります。よって、他の営業活動と比較しても実際に成約に至る可能性は高くなるのです。
DMによる営業活動について、ポイントとなるのは以下の3点です。
1) 誰に(送付先)
2) 何を(送付内容)
3) どうやって(送付タイミング)
それぞれについて、具体的に紹介します。
誰に(送付先)
DMを発送するにあたり、誰に対してアプローチするのかは重要なポイントです。送付先におけるポイントは、以下の2点です。
■起業したての企業を狙う
■自分の事務所から近いエリアを狙う
結果的に顧問契約を狙ったアプローチを進めるのであれば、当たり前ですが、顧問契約に至りやすい企業を狙うべきです。具体的には、「起業したばかりの企業」を狙ってアプローチすることが考えられます。既存の企業には、既に顧問社労士が存在するケースも多いためです。
また、送付先エリアについては、自分の事務所からなるべく近いエリアを狙うことがお勧めです。個別相談から進展があった場合に、物理的に近ければ動きやすくなりますし、移動時間が少なくて済む分、商談に向けた準備に充てられる時間も長くなります。また、近くに事務所を構えていることにより、企業に対してレスポンス良く対応することも可能となります。意外と見落としがちですが、大切なポイントです。
「起業したばかりの企業」については、国税庁の「法人番号公表サイト」にて、法人の称号及び所在地などから法人番号を調べることができ、情報を収集可能です。検索する際に、所在地や法人種別(株式会社、合同会社など)などの絞り込みが可能となるため、自分自身のターゲットイメージに近い企業を検索し、リスト化します。
このように、エリアを絞って起業したばかりの企業に対してアプローチすることで、顧問契約に至りやすい企業に対してアプローチすることができるようになります。
何を(送付内容)
DMそのものの内容について、押さえておきたいポイントは以下の3つです。
■DMの形態
■キャッチコピーの活用
■個別相談などへの申し込み方法
まずDMの用紙について、封筒を使用し情報量を多くする方法と、ハガキを使用する方法があります。封筒を使用することで、チラシを封入したり、サービス内容を複数記載したりと情報量を多く届けることも可能ですが、お勧めは「ハガキ」によるDMです。
先述した送付タイミングにおいては、企業側には多くのDMが届きます。また、経営者は多忙を極めており、全てのDMに目を通す時間的余裕はないと考えた方が良いでしょう。そうした中、封筒を開けなければ読めないDMでは、せっかく内容を精査し、魅力的なDMを作成したとしても、経営者の目に止まる可能性そのものが減ってしまうのです。よって、「封筒を開ける」という手間の掛からないハガキにてアプローチすると良いでしょう。しかし、ハガキでは封筒を用いる場合と比較し、届けられる情報量は減ってしまいます。そこで、キャッチコピーを活用し、経営者の目に止まるような工夫をすることが必要です。
キャッチコピーについては様々な手法が存在しますが、特に重要なのは、受け取り手の悩みに響く言葉かどうかを意識して検討することです。「本業に専念したいのに手続き関係が煩わしい」「人事面の制度整備が難しくてよくわからない」「労務関係のトラブルが怖い」など、アプローチしたい経営者がどのような悩みを感じているか、また、今後どのような悩みを感じるかを想像します。結果、経営者の心に届く言葉を記載し、興味を持たせて、次のアクションに移ってもらうのです。
DMの中には、個別相談などへの申し込み方法も記載します。その際に意識したいのは、多忙を極める経営者は、どのような方法がストレスなく申し込みできるのかを考えることです。電話申し込み、ファックス、メール、申し込みサイトなど、方法は複数存在しますので、「手間なくストレスなく」を意識し、記載するようにしましょう。
どうやって(送付タイミング)
DMを送付するタイミングとしては、送付先企業が起業して1ヵ月以内のタイミングと、起業して3ヵ月程度経過したタイミングの最低2回は送付すると良いでしょう。
起業して1ヵ月以内のタイミングについては、競合となる他社労士よりも早くアプローチすることが目的です。法人番号を検索する際に、検索条件を絞ることで確認が可能です。こちらのタイミングについては、送付先企業も起業して間もないこともあり、社長が多忙でDMそのものを良く確認できない恐れがあること、様々な宣伝や勧誘のDMが届くタイミングであることから、そうした中に埋もれてしまう懸念もあります。しかし、社内の制度を整備する必要のある時期ではあるため、早々にアプローチするべきでしょう。
また、起業して3ヵ月程度経過したタイミングについては、実際に顧問契約を獲得できた事例のあるタイミングになります。起業したばかりのタイミングでは、経営者は本業の活動に加え、制度面の整備も進めようとします。また、早々に従業員を雇用し、事業拡大を図ろうとする経営者も多く存在します。そうした際に、就業規則や雇用保険の整備など、手続き関係の業務でニーズが生まれるのです。つまり、「起業し事業拡大を図るため、益々本業に専念したい社長」が魅力的に感じる内容のサービスをタイミング良く差し出すイメージです。
このように、DMについては競合となる他社労士よりも先駆けて企業にアプローチする事を目的とした企業が起業したてのタイミング、さらに事業拡大を図るため人事面のニーズが高まってくるであろう3ヵ月程度経過したタイミング、最低この2回はアプローチしたいところです。
まとめ
以上、DMによる営業活動を中心に紹介しました。
様々な営業方法が存在する中で、本稿で紹介した営業方法は、紹介のように他人に頼らず、自らの力で顧客を開拓する手法です。よって、実践することでノウハウを蓄積し、成約率を上げていくことも可能となります。本稿で紹介した内容で実際に顧問契約につながったケースも存在します。ぜひ、自らの力で顧客を獲得する手法として検討してください。
文:北田 健太(中小企業診断士)/編集:志師塾「先生ビジネス百科」編集部