Last Updated on 更新日2018.9.26 by 五十嵐和也
先生の中に、次のようなセリフを言う人をよく見かけます。
「私はもともと、人前で話すのが苦手だったんです。」
セミナーの冒頭でよく聞くセリフですよね。私も、「人前で話すことが苦手だった」タイプの一人です。
しかし、そのような方に限って素晴らしいセミナーや講習会を開催しています。
いったいなぜでしょうか?
過去に苦労した経験、恥ずかしかった経験、トラウマを抱えているからこそ、乗り越えられ、「自分と同じような経験をしている人の役に立ちたい!」と心から感じているからではないでしょうか?
とはいうものの、さまざまな勉強や経験を積んでいるはずです。
本記事では、
「セミナーでの話し方のコツを知りたい。」
「普段からの話し方に注意した。」
「話すのが上手くなりたい。」
上記のような、先生業や士業の方向けの話し方のコツについてお伝えしたいと思います。もちろん、先生業の方以外でも取り入れられる内容になっておりますので、少しでも多くの学びや気付きがあれば嬉しく思います。
※先生業とは士業・コンサルタント・コーチ・講師などのことです。
この記事の目次
セミナーでの話し方のコツ:小さな欠点に触れる
実際にセミナーを開催して感じたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、「自分の強いところを見せないと、クライアントに信頼してもらえないのでは?」といった、恐怖を感じたことはなかったでしょうか?
どういうことかと言いますと、私はセミナーの時はいつも緊張しています。始まってしまえば徐々に慣れてきますが、セミナー前半は少し早口かもしれません。それは、どんなセミナーの時でも同じです。人数に関係なく、こっそりと緊張しているのです。こうしたことを言ってしまうことに、少し抵抗感がありました。「緊張しているなんて、小さな人間だな!」と言われてしまうことを恐れていたからです。
弱点を告白したことで成功した事例
しかし、世の中には弱点を上手く話すことによって、成功した事例があります。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、とてもほっとする研究結果を手にしましたので、ご紹介しますね。
行動科学者の事例
行動化学者のキップ・ウイリアムズらの調査によると、弁護士が相手側に指摘される前に自ら自分の申し立ての弱点に触れた場合、陪審員はその弁護士を誠実だとみなして信頼を置き、評決に当たってその主張に対する支持が増しました。
フォルクスワーゲンの事例
またフォルクスワーゲンでは、見た目の良さが求められていたアメリカで、
「不格好なのは見た目だけです」
「ずっと不格好なままでいい」
と、広告を打っていたそうです。その結果として、フォルクスワーゲンは、笑いの種だった車から、ステータスシンボルの車に成長したのです。
先生も欠点を告白してみよう
実は、商品の小さな欠点にあえて触れることで、その企業を信頼できるというイメージが生まれることが分かっています。こうした点を考えると、先生でも「あえて欠点を露出すること」で、信頼が高まるということができるのではないでしょうか。ウェブや提案書に、少しだけ欠点を織り交ぜてみましょう。すると、「こうした欠点をきちんと把握して言える先生なんだな」と、思ってもらい信頼されやすくなります。
例えば、話の苦手な税理士さんがいらっしゃるとすると、あえて「話すのは少しだけ苦手です」と伝えてみることで、逆に誠実性をアピールできるでしょう。ただし、致命的な欠点を出さないようにご注意ください。二度と信頼されない可能性もありますので…。
セミナーでの話し方のコツ:アイスブレークを入れる
セミナーを開催する時、緊張しているのは講師だけではありません。中には、セミナー受講生も緊張されている方もいるのではないでしょうか?もしかすると、「最前列の真ん中の方、緊張しているかもしれない。」と、見て分かる方もいらっしゃるかもしれませんね。
その緊張を解きほぐすための方法は、セミナー冒頭で簡単なアイスブレークを入れることをオススメします。実は、これが意外と効果があるんです。先ほどもお伝えしたように、セミナーの受講生も初めは緊張しています。「いきなり当てられたらどうしよう?」など、考えているかもしれません。そのため、アイスブレークを入れることで、受講生の方もホッとします。自分の緊張を解きほぐすために入れているアイスブレークが、実は受講生の方にとってもメリットとなるわけです。
弱点を取り入れた広告事例
ちょうど面白い研究結果を見つけましたので、ご紹介しますね。社会科学者のゲルト・ボーナーらが次のような実験を行ったそうです。ボーナーは、あるレストランの広告を3種類作りました。
- プラス面だけを掲載
→くつろいだ雰囲気 - プラス面とそれに無関係なマイナス面の掲載
→くつろいだ雰囲気だが、専門駐車場はない - プラス面とそれに関係したマイナス面を掲載
→狭いが、くつろいだ雰囲気
その結果、もっとも評価の高かった広告は3番目の広告だったのです。つまり、短所を示して、それに関係する長所を示すことで、もっとも効果が高いということが示されているということですね。
講師側が「緊張しています。」と告白すると同時に、「それでアイスブレークを入れるので受講生も緊張が解けます。」という点も伝えることが大切です。みなさんも、短所と、それに関連する長所があれば、どんどん告白してみてはいかがでしょうか?
セミナーでの話し方のコツ:話に引き込む
さて、これまでお伝えしてきたのはセミナーの冒頭部分でしたね。「私は、緊張しています。」という話し方を取り入れるだけで、場の空気が変わるということです。では、セミナー中に受講生をドンドン話に引き込んでいくには、どのような話し方のコツを取り入れればいいのか、お伝えしていきます。
もし、次の問いに答えられれば、お客様を獲得できるでしょう。
「あなたは、話にお客様を引き込むことができているでしょうか?」
いかがでしょうか?さらに、「面白い人」と思って貰えることで、講師として呼ばれたりすることも増えるかもしれませんね。
しかし、「そりゃ、話に引き込みたいですが、それが難しいんですよ…。」と、思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、話に引き込むことには、いくつかのコツがあるんです。このコツを手に入れれば、引き込むことができるようになりますので、是非とも取り入れていただきたいです。今回、特に影響度の大きい3つのポイントをお伝えしたいと思います。それは、次の3つのポイントです。
- 右脳アタック
- ストーリーの活用
- 裏切る
話に引き込むコツ:右脳アタック
これは、とてもシンプルです。「理屈だけでは、相手の興味を引けない」ということです。理論ばかりを話している人は、「つまらない」と思われてしまっている可能性があります。つまり、理論を説明しているという状態です。いかがでしょうか?心当たりがある方は注意してくださいね。
論理的な説明は、左脳に訴求しており、どうしても「面白くない」と感じてしまうのです。これだけですと、納得はしても『興味付け』までは中々難しくなります。数式ばかりを並べられた数学の授業は、確かに必要で正しいかもしれませんが、眠くなってしまいますよね。そうではなく、右脳に訴求するのです。つまり、右脳とは感情のことです。話の基本は、理論&事例です。理論と事例をセットで話すと、話に引き込めるということです。
理論:左脳
事例:右脳
もし、この内容を見て、ご自身が理論ばかり話していると感じるのであれば、理論をより伝わりやすくするための事例を必ず話すようにして下さい。
話に引き込むコツ:ストーリーの活用
「事例を話すのは分かったが、どのように話せば良いか分からない…。」
と悩んでしまうかと思います。ここで登場するのが、ストーリーです。事例を淡々と話しても、相手の右脳(感情)は揺らぎません。そうではなく、ストーリーを活用することが大切です。ストーリーを話すコツは、次の3つです。
- 登場人物を設定する
- マイナスとプラスのギャップを作る
- 比喩を入れる
ご自身の話にストーリーを導入されているでしょうか?このストーリーを語ることで、ご自身の見込み客が引き込まれるはずです。
話に引き込むコツ:裏切る
少し言葉が乱暴ですので、言い換えてみましょう。ここで言う「裏切る」とは、「想定外の変化を作る」ということです。人は、話を聞いていると、無意識的に話の先を予想します。つまり、その予想を裏切るということです。想定外の話をどれだけ入れられるかがポイントになってきます。こうすることで、人は「え?そうなの!?」と引きこまれていきます。例えば、
「皆さん、大切なことをお伝えします。是非とも、自宅に帰ってから○○のワークを・・・やらないでください。」
といった感じですね。おそらく、「是非とも○○のワークを・・・」の箇所では、「やってください」という語尾を予想するはずです。そうではなく、「やらない」って言うことで、「え?どういうこと?」という引き込みができるというわけです。これはほんの一例ですが、聞き手が想定していないような話の流れを是非とも盛り込んでみてください。
ここで、もう一度3つの事項についてポイントをお伝えしましょう。
- 右脳アタック
- ストーリーの活用
- 裏切る
是非、活かしていただけると嬉しいです。ビジネスにおいて、「話に引き込む力」を持っておくことはとても重要です。営業だけでは無く、ファンを作ったり口コミを拡げたり、ということができるようになってきます。人の前で話す機会を多く持っている方は、このスキルは必須です。是非、引き込むスキルをマスターしてください。
セミナーでの話し方のコツ:事例は選んで紹介する
セミナーだけではなく、先生の方々がクライアントに提案する際、成功事例を使うことはよくあると思います。成功事例を使うことで、提案内容を具体的にイメージしてもらうとともに、「この提案で私も成功するんだ」と感じてもらいやすくなるためですね。また、先ほどもお伝えしたように、事例を出すことは右脳(感情)に訴えかけることができるという効果もあります。
その時に先生の方々が悩むポイントは、「どの事例を使えば良いか」ということではないでしょうか。特に、先生の経験を積むにつれて、成功事例が蓄積されてくるので、ついつい「一番成果の上がった事例」を紹介してしまいがちです。しかし、ここは要注意です。人は「自分と似たようなところでそのサービスが役立ったなら、うちでも上手くいくに違いない」と考えるものです。それを証明する面白い実験がありますので、ご紹介しますね。アメリカの心理学者であるノア・J・ゴールドスタイン博士が、次のような実験を行いました。
<実験>
ホテルでタオルを再利用してもらうことで環境負荷を減らしたい。そのために、ホテルの連泊者に対して、次の3つのパターンのカードを部屋に置きました。
- 環境保護メッセージの書かれたカード
- ホテルに泊まった大多数が再利用したことを伝えるカード
- 過去にその部屋に留まった人の大多数が再利用したことを伝えるカード
その結果、3 → 2 → 1の順で、再利用率が高かったそうです。
この解釈としては、「自分と同じような環境の人」の行動を、人は真似する傾向にあるということです。これは、先生の方々の事例紹介でも同じようなことが言えるのではないでしょうか。事例を使う時は、「大成功した事例」よりも、「クライアントに最も似ている成功事例」を活用することが、クライアントの心を動かすのに効果的ということです。こうした心理を活用することで、ご自身の提案も通りやすくなると思います。試してみてはいかがでしょうか。
今回の記事のまとめ
今回お伝えした内容を実践していただくことで、話にグッと引き込むことができるようになるでしょう。しかし、すぐに効果が表れるかということそうでない場合もあります。ご自身のセミナーを動画などで振り返り、一つ一つ細かく修正を加えてより良い内容に仕上げていただくことが大切だと思っています。
1~2時間程度のセミナーの中にも、「こうしたらもっと良くなる」というポイントはたくさんあるはずです。その際、本記事を思い出していただき、参考にしていただければ嬉しく思います。