税理士が独立開業するために準備すべきこと

税理士を志望する方の中には「独立開業」を目指す方も多いことでしょう。しかし、税理士を含む士業の競争環境は厳しさを増しています。2019年8月の税理士登録者数は2009年比約10%増の78,323人(日本税理士会連合会調べ)であるのに対し、2014年の企業数は2009年比約10%減の389万者(中小企業白書調べ)。税理士の登録数が増える一方、企業数が減少傾向にあり、限られたパイを取り合う図式になっているのです。
ここでは、税理士資格の取得から独立開業し、成功をつかむまでのノウハウ、開業に伴うリスクについて解説していきます。

税理士になるための条件

◆税理士試験とは

税理士として開業するには、まず税理士になる必要があります。そのためには、「税理士試験の受験要件」を満たして、「税理士試験に合格」すること、「2年間の実務経験」を積むことが必要となります。

◆税理士試験の受験要件を満たす

税理士試験を受験するためには、まず「受験要件」を満たす必要があります。
ここでは、税理士試験を受けるための受験要件をまとめました。学識・職歴のない方は、日商簿記検定1級に合格するなどによって要件を満たす必要があることに注意してください。


※司法試験の合格者にも受験資格は与えられますが、自動的に税理士資格を得るため、割愛。

◆税理士試験に合格するためには

ここでは、税理士試験に合格するための3つの方法について解説します。

(1)「税理士試験」に合格する
一般的な方法は、税理士試験に合格することです。
税理士は、会計・税法の学位(修士号or博士号)取得者向けの科目免除制度があり、免除科目と試験合格を組み合わせることで、税理士試験に合格することができます。

(2)「弁護士」もしくは「公認会計士」に合格し、免除資格を得る
これらの資格保有者は税理士試験を受けずに、同時に税理士試験合格扱いとなります。

(3)税務署でキャリアを積み、免除資格を得る
税務署で23年キャリアを積むことで、「税務知識」と「実務スキル」を習得したとみなされ、試験が免除となり、税理士資格を取得できます。

(4)税務署で10年以上キャリアを積むことで、「税務科目」の免除資格を得られます。会計科目の試験合格と組み合わせることで、税理士試験に合格することができます。

◆税理士試験を受験する

税理士試験は年1回、毎年8月に開催され、全11科目の中から、会計科目2科目、税法科目3科目の計5科目について、60点以上取ることで、税理士資格に合格できます。

税理士試験の受験料は科目数によって、下表のとおり変わります。

受験科目については、下表に簡単にまとめましたので、参照ください。

なお、税理士試験の科目別合格率はそれぞれ10~17%台であり、1回の受験で5科目全てに合格する方はまれです。公認会計士など、他の資格と異なり、科目合格の権利は永久に消えませんので、数年かけて合格する形が一般的だといえます。
 
◆実務経験を積む

実務経験とは、租税・会計に関する所定の業務に従事した経験であり、通算して2年以上必要となります。そのため、税理士試験の合格を目指す方は勉強をしつつ、会計事務所などに勤務するのが一般的です。
その際、事務所の業務内容や人員体制などをよく観察しておくことをお勧めします。その知見は、あなたが将来独立開業する際に、きっと役立ちます。
また、税務スキルの向上を目指すと同時に、人的ネットワークの構築を意識し、独立する際に応援してくれる人を増やしていくことを心がけてください。

開業手続き

「税理士試験の合格」と、「実務経験」を合わせ、税理士として登録する準備が整いました。
これから、開業に必要となる、「登録手続き」について解説していきます。

◆登録申請

登録要件を満たしたら、日本税理士会連合会に税理士登録申請書を送り、税理士名簿への登録申請が必要となります。申請書類は細かい規定が設けられているので、日本税理士会連合会のウェブサイトを必ずご確認ください。
その際に、開業を検討するエリアの税理士・税理士法人の数などを日本税理士会連合会のサイトで調べ、将来的なライバルや、クライアント候補企業について検討しておきましょう。
登録申請の受理後、申請先エリアの税理士会による面接や調査が行われ、登録適当と認められれば税理士名簿に登録され、官報に公告されます。 

◆登録に必要な書類
 
登録するときは下表の書類を揃える必要があります。
下表は、東京都在住の方が賃貸マンションの一室を使って開業する際の例です。
各都道府県会によって多少違いがありますので、事前にHPなどでよく確認しましょう。

◆登録に必要な費用

例えば、東京都の場合、登録の際に必要な費用は下記に示す通り、約18万円が必要となります。

・登録免許税(6万円)
・登録手数料(5万円)
・東京税理士会入会金(4万円)
・東京税理士会会館建設費(2万円)
・登録時研修受講料(5千円)
・その他書類申請に関する手数料・郵送費用等(約5千円)
 [課税所得証明書直近2年分(600円*2)、身分証明書(300円)、戸籍謄本(450円*2)、
  住民票(300円*2)、投棄されていないことの証明書の印紙代(300円)+証明写真代]

登録免許税および手数料は全国一律ですが、入会金および年会費は各都道府県や登録形態によって異なります。
登録申請前に各協会のHPなどで確認しましょう。

◆事務所の開設

開業時は、事務所の所在地登録が必要です。
開業当初は資金的にも余裕がなく、自宅で開業する先生も多いですが、資金に余裕があれば貸事務所やレンタルオフィスを利用してもいいでしょう。
税理士はこちらから顧客の事業所に訪問するため、顧客が事務所に訪ねてくることはほとんどありませんので、大きな事務所を構えずとも開業できます。また、近年は電子申請で手続き業務ができますので、役所から遠いところで開業してもそれほど業務に差し支えないでしょう。

◆事務所の名称を決める

事務所の名称は、自由に設定できます。長く使う名前になりますので、信頼感と愛着のある名称がよいでしょう。一般的には「○○税理士事務所」など、税理士と分かりやすい名称が多いようです。

税理士の業務

税理士として開業した先生はどのような業務をするのでしょうか。ここでは税理士業務についてお話します。

◆税理士の独占業務

税理士の業務は税理士法に定められています。
税理士法第二条において、税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つの業務が独占業務として定められており、資格を持たないものは取り扱うことはできません。

(1)税務代理とは、一般納税者に代わって申請・申告手続の代理を行う業務です。税金に関する法令は複雑で、頻繁に法改正が行われるため、一般納税者が適切な納税申告を行うことは難しいものとなります。そこで、税務の専門知識を持つ税理士が申告の手続を代行することで、納税者は手続に時間や労力をかけることなく、納税義務を適切に果たすことができるというメリットがあります。

(2) 税務書類の作成とは、申請・申告手続の前に、申請書・申告書を作成する業務です。例えば、毎年2月から3月にかけて行われる確定申告に向け、税務署へ提出する申告書を納税者に代行して作成できます。また、相続時に発生する相続税に関して必要な相続税申告書を税理士が作成・提出することもできます。

(3)税務相談とは、租税の課税標準などの相談に応じることです。例えば、確定申告が近づくと、各所で税理士による税務相談会などが開かれます、所得の具体的な算出方法や贈与に関する事柄など、税の様々な相談に応じて指導します。

◆税理士のその他業務

(1)役員や株主の所得税や相続税対策
中小企業に対しては、法人税関連の業務と並行し、経営者本人の納税関連業務に携わる機会も出てきます。というのも、税法上のしくみについて熟知する経営者はほとんどいないからです。例えば、経営者の役員報酬がルールから逸脱した結果、税務上の経費に算入できずに多額の法人税支払いが必要となるという事態が生じることがあります。
そのような事態を避けるためにも、税理士は税務の専門家として、適切な納税と健全な会社経営の両立を目指したアドバイスを行うことになります。

(2)経営者の良きアドバイザーとして
事業再生や事業承継、組織再編にM&Aなど、会社をとりまくあらゆる変化に、経営者は常に考えをめぐらせていく必要があります。経営者がそのような局面に立った際に、税務面から的確なサポートを行うことが税理士に求められます。

(3)資金調達、資金繰りの相談
赤字決算で「融資を受けることは難しい」と考えている会社でも、事業計画の内容次第では融資を受けられる可能性もあります。税務や会計の知識を活かして融資を受けられるよう、事業計画を一緒に見直すことも税理士の仕事の一つといえます。

(4) 経営面のアドバイスをする税理士も
企業の顧問税理士となり、経営面の見直しや売上向上に向けた取り組みの提案を求められることがあります。
税務対策と併行し、企業内の業務や事案を客観的に調査・分析し、改善策を提言することも経営面のアドバイスとして役立っています。

◆独占業務の将来性
 
電子申請やAIの普及、税理士間の過当競争による顧問契約の単価減などによって、開業税理士は独占業務だけでは差別化できない時代になりつつあります。
会社と顧問契約を結び、独占業務で安定収入を確保するというビジネスモデルだけでは、徐々に難しくなってくるかもしれません。そのような状況に備え、差別化ポイントを意識しておくことが重要です。

◆コンサル分野で差別化

世の中の複雑性が増す中、企業ニーズも多様化し、税理士が解決すべき課題も増えています。
新たに開業する税理士の先生は、得意分野に特化したコンサルティング業務に力を入れ、顧客の悩みを解決する提案を行うことが求められてきています。難しい反面、やりがいのある仕事と言えるでしょう。

開業税理士の顧客開拓方法

開業したての税理士がまず行うべきことは顧客の開拓です。苦労して取得した税理士資格を活かして、多くの収益を上げるためには、顧客を開拓し、増やしていく必要があります。
では、顧客の開拓にはどのような方法があるのでしょうか。いくつか例を挙げます。

◆知人の紹介
開業時に一番声をかけやすいのは友人や知人です。開業の挨拶時に、得意先の紹介をお願いしておきましょう。

◆他士業からの紹介
他士業との協力関係を築くことで、仕事の紹介を得られる場合があります。社労士・司法書士・行政書士・中小企業診断士・弁護士など、他士業の事務所に開業挨拶に行きましょう。また、異業種交流会に参加し、自分の専門分野をアピールするのもよいでしょう。他士業の方は、税務関連領域に必ずしも強いわけではないため、そこを補ってほしいニーズは必ずあるはずです。

◆ホームページでの情報発信
ホームページは事務所の顔となるものです。営業ツールとして非常に有効ですので、開設し、事務所案内や自己紹介などを掲載することをおすすめします。また、税務関連コラムなどの情報を発信することで閲覧数を増やし、知名度を高めることもできます。

◆セミナー講師
税務関連のセミナー開催は、会社経営者などと人脈を築くチャンスです。セミナーの企画運営会社に講師として登録すると、セミナーの開催頻度が高まり、より効率的に集客できるでしょう。

◆執筆活動
専門誌や業界誌などの執筆は、新人税理士の実績作りや信頼感を高めるためにおすすめできます。掲載された記事は業務実績として宣伝材料に使うことができ、記事を読んだ企業から相談依頼を受ける可能性もあります。

この他にも、飛び込み営業など、様々な集客方法が考えられます。
すぐに契約には結びつかなくても、自分を売り込む経験は、顧客が求めるものを考える貴重な機会となるでしょう。

いかがでしたか。
税理士として開業し、活躍していくためには様々なステップがあります。
そのためのステップをひとつずつ着実にクリアし、皆さんが活躍していかれることを願っています。

文:五味義也(中小企業診断士)/編集:志師塾「ビジネス百科」編集

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