歌って踊って依頼者に寄り添う司法書士~中田真人~

司法書士にどのようなイメージをお持ちでしょうか。「相続や登記に関する法律家」「必要な書類の事務手続きをしてくれる人」など少し硬いイメージを持つ方もいるかもしれません。中田真人(なかた まさと)さんは依頼者に寄り添った立ち位置で、埼玉県を中心に司法書士として中心に活躍しています。
今回は、起業のきっかけや、開業から現在までの苦難とそれを乗り越えてきたエピソード、今後のビジョンについてインタビューしました。
ダンディな見た目で気さくな話しぶり、さらに歌って踊れるパフォーマーとしての一面もお持ちの多才な方です。

司法書士としてのお仕事の内容を教えていただけますか

電力会社や不動産会社、一般の個人の方をお客様として、法人設立の手続きや不動産の権利設定の手続きを行っています。業種や業務内容に偏りはなく、一般的な司法書士の業務範囲です。
集客方法は主にお客様の紹介です。8割から9割が紹介によるお客様で、開業直後から約18年間ご依頼がある会社もあり、深くお付き合いしています。

司法書士として起業されたきっかけを教えてください。

大学を卒業後、3年間企業に勤めましたが、その3年間で「私は会社勤めに向かない」ということがはっきりとわかりました。通勤の満員電車が苦痛でしたし、会議等が無駄に思え、嫌で仕方がありませんでした。会社を変えてみましたが、出た結論は同じで「やっぱり会社勤めに向かないな」と言うことでした。
今考えるとそれも含めて仕事だとは思えるようになりましたけど。当時はダメでした。(笑)
そして、独立して何をしようかと考えた時に思い出したのが、大学時代に学習塾でアルバイトをしていた時の経験でした。中小規模の学習塾だったのですが、社長が夜逃げして、塾の業務が何も回らなくなってしまいました。目の前で生徒が泣き、親御さんからはクレームを受けるのですが、その時大学生だった私は謝ることしかできませんでした。
「大学で高度な知識を学んでいるが、世の中の役に立てられていない。私が世の中に通用するスキルや情報、知識を持っていれば建設的な応対が出来るのに」という悔しかった経験を思い出しました。それで、法的な手続きを支援する仕事ということで司法書士を目指すことにしました。

写真2普段は新幹線が見える見晴らしのよいオフィスでお仕事しています。

開業直後はどのように集客しましたか?

開業直後の営業はとても苦労しました。個人のお客様は、相続や贈与、会社設立等で依頼を受けることが多いです。しかし、その方ご自身にとっては頻繁にあることではないので、費用の相場がわからないのです。司法書士に依頼をして、「登記」ということをしてくれるのはわかるが、どのような作業をするのかも分からないので、こちらから正当な値段を請求しても「そんなにかかるの」と言われてしまいます。そのため、注文を受けるためには初回の単価を安くせざるを得ませんでした。

どのように克服したのですか?

1回目の注文の敷居を低くして、まずは自分のことを知ってもらうことに注力しました。一言でいうと「優しい司法書士」を目指しました。
例えば、不動産登記の見積もりを出すにも、その不動産の場所や評価額や現金で買うのか抵当権をつけて買うのか等、細かいことが全てわからないと本当は値段を出せません。でも、お客様は見積もりを出して欲しいのです。そこで「いやいや、これらの情報がないと見積もり出せませんよ」ではあまりにも優しくないので、「例えばね、東京の郊外にある1戸建ての建物で一般的なこれくらいの広さだったら評価額はこれくらいですね。」と仮定を置きながら先回りして見積額を伝えます。間違ったことを言いたくない人が多いのか、こういった対応をする司法書士ってあまりいない気がします。ただし、後でトラブルにならないように但し書きはしっかりつけますよ。
お客様も何か所かの司法書士事務所で話を聞き比べてきています。そこで「お、ここはいいね、優しいね」って感じてもらえれば、「他の事務所よりもちょっと高いけれど、応対いいから中田事務所に決めよう」と選んでくれるようになります。

つまり、お客さんは値段の相場がわからないので、最初は頼みやすい値段設定にします。まずは自分を知ってもらってから、次以降の依頼で正規の請求をするように工夫してきました。

開業10年頃に向かえた苦難について教えてください。

開業して10年の2010年頃に、市役所に消費生活相談課という借金相談が出来る窓口の設置と消費者金融の違法利息の判決という大きなイベントが2つありました。これらの手続きを実際に行う場合は、司法書士か弁護士に依頼が来ます。仕事が急激に増加して、業務が回らなくなってしまいました。
仕事はどんどん溜まっていくのに、全然やる気が起きず、また仕事が溜まるという悪循環に陥ってしまいました。今考えれば、計画的に業務量を把握してセーブすればよかったのでしょうが、当時の私は出来ませんでした。悪い見本ですね。

その悪循環からどのように持ち直したのでしょうか

なんとか解決の糸口を探して、いろいろ考えた末、全ての業務を1人で行っているのが原因かなと思ったのです。つまり、業務には資格や知識がなくても出来る単純作業の部分を他の人に頼んでやってもらうことにしました。
事務員を1人雇い、資格も経験もないので一から業務を説明しました。最初は経験もないので苦労し、軌道に乗るまでに1年くらい掛かりました。単純作業は事務員、考える部分やお客様との面談は私という業務分担が出来るようになると、業務もうまく回るようになってきました。私がお客様との面談にも集中出来て、内容が頭に入るようになりました。その結果、顧客満足度も高まりました。
それまでは面談記録のワープロ打ちも自分でやっていたのですが、それらも全て事務員に依頼して、もとの業務量の3分の1くらいになりました。一つの仕事に集中も出来るようになると同時に、対応できる案件数の面でも3倍くらいになりました。

仕事が山積み業務量を捌けるようになったこと以外に、業務フローという財産が出来ました。それまでは私だけが業務内容やその進捗をわかっていればよく、業務フローなどは自分の頭に入っていて、紙に書いたりはしていませんでした。しかし、今回、業務分担し進捗を共有することになり業務フローの表を作りました。必要な作業を洗い出すので自分の業務の整理にもつながりました。

いま振り返ってみると、自分の頭の中にしか業務フローがないというのはとても怖く感じますね。

最近ではどのような苦労がありましたか?

司法書士の業界は営業面でのWEBの活用が遅い業界だとは思いますが、それでもWEBを活用した集客がとても増えてきています。情報収集が容易なため、価格だけで判断され、価格が低い方にお客様が流れています。
それに対し、最初は専門業務を決めてそれに特化して事業展開しようとしたのですが、結局どの分野も自分は後発なのでなかなか勝ちにくい。

そこで集客のためには、まず自分を覚えてもらわないといけないと考えるようになりました。というのは、司法書士の仕事は、一般の人にとって「一生に一度くらい誰にでも起こることですが、頻繁に怒るものではない」「いつかきっと頼むことになるのだけれど、いまはその時ではない」という部分の仕事なのです。ですから、司法書士としての仕事のお付き合いを重ねつつ、その人の来るべきタイミングで私のことを覚えておいてもらわないと意味がないわけです。

どうするかというと、司法書士の特定の専門分野で特化するよりも、「この人変わっているな」という感じでも良いので、司法書士という枠を超えて人として覚えてもらうことが一番いいなと思うようになりました。

人として覚えてもらうとはどのようなことか教えてください。

ステージ衣装を着て、歌って踊れる司法書士としてライブを行っています。司法書士業務とは関係ありませんが、そもそも一般のお客様から縁遠い業務をしているわけですから、業務内容やその専門性をアピールしてもピンとこないのです。歌というところで覚えてもらうのは、他にやられている司法書士方はあまりいないですし、差別化出来る部分だと思って活動しています。

実際にFacebookにライブの内容を載せておくと、ファンになってくれる方がいます。後から司法書士ということがわかって、仕事の依頼をいただくこともあります。効いているなと手ごたえを感じています。

私は、元々音楽は好きで聴いていましたが、演奏したり歌ったりはしたことがありませんでした。しかし習っているボーカルのコーチに言わせると、経験がなくまっさら状態だと癖がついておらず訓練でスキルを身につけやすいし、ステージでは性格の良さと今までの人生の様が表に出てくるそうです。「私は大丈夫ですか?」と聞いたら「大丈夫!Good!」と言われました。(笑)
この差別化はいろいろな先生業で使えると思いますよ。

差別化を模索しているタイミングで歌と出会いました。

将来のビジョンを教えてください。

中高年の人、40歳代、50歳代の方に感動を届ける仕事をしたいです。司法書士の仕事は、お客さんにとって安心を届けることはできますし、「ありがとうございます。助かりました。」という言葉はとても嬉しいですが、そこにお客様の楽しいとか、ワクワクする気持ちはありません。歌やパフォーマンスをもっとアピールしていきたいと思っています。
本業は司法書士ですので、歌の活動も続けて、司法書士業務と歌をもっとリンクさせていきたいです。

具体的には、私が習っているボーカルのコーチはいくつもグループを率いていたり、教室で生徒にレッスンしていたりしているのですが、全て個人で行っているので大変忙しいのです。当然レッスンはそのコーチが直接教えないといけないし、その他に月謝徴収の管理とか、ライブの日程決めとかです。
そこでグループの何人かが見かねて、コーチの事務所を法人化して事業を立ち上げようと計画しています。その法人設立となると私の専門分野であり、業務とリンク出来ますので、第一歩踏み出してみたいなと考えています。

もうひとつビジョンがあります。最近、機械化やAIに注億が集まっていますが、人間でないと出来ないコンサルティングの部分を強化していきたいと考えています。械化やAIに取って代わられるというのは確かにその通りです。実際に、法人の設立にしてもWEBで調べれば本人でも申請書を書いて書類をそろえて、どうやって登記所に提出すればよいかわかるようになっています。ですから、そういった事務的な部分の仕事も含めて、全体の仕事は減ってきています。

しかし、例えば、法人名をつける、会社の住所を記載する、事業目的を記載するということについて、表面的な部分には問題がなくても、開業後の事業展開を考えた場合にアドバイス出来ることがあるのです。そういうアドバイスが出来ない事務所もたくさんありますし、その人達の仕事はどんどん減ってきています。今後さらに機械化で置き換えられていくと思います。
つまり、機械で出来る単純作業部分とそうでないコンサルティング部分とを分けて、コンサルティングサービスで付加価値を高めていきたいです。

インタビューを終えて

差別化の解決策として、業界の中で「自分自身の強みは?」「専門性は?」と考えてしまいがちですが、「人として覚えてもらう」という発想がとても印象的でした。両立は簡単なことでは無いと思いますが、司法書士業務も歌の活動も充実ぶりが良く分かるインタビューでした。

文:丸田良廣(中小企業診断士)/ 編集:志師塾「ビジネス百科」編集部

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