セラピストとして開業し成功するために

Last Updated on 更新日2018.7.3 by

とかくストレスの多い現代社会。仕事や人間関係などで心身ともに疲弊し、癒しを求める人が増えています。それにこたえるように癒しビジネスの種類も多様性を増しています。たとえばオイルトリートメント、リフレクソロジーなどのボディや足に直接刺激を加えるものから、アロマやカラーといったメンタル面に効果をもたらすものまで幅広い領域があります。

これら施術を行う者の呼称は様々ですが、ここでは「専門の技術を用いて癒しを提供する者」を総称してセラピストと呼ぶことにします。今回は、セラピストを職業として開業するにあたり、知っておきたいことをご紹介したいと思います。

セラピスト職の特色

日本ボディセラピスト協会、日本プロセラピスト協会、日本リラクゼーション業協会・・・など、セラピスト業界には関連する協会や民間団体が数多く存在しており、それぞれが定める資格制度の種類も多岐にわたります。しかし、セラピストとして開業するためにはそういった資格を保有している必要はなく、“セラピスト”は誰でも名乗ることが可能です。一方、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師などは国家資格が必要であり、資格を有しない者がこれらの名称を用いることは法律で禁じられています。

開業するための初期費用ですが、セラピストの提供する価値(商品)は、主として手技などの“技術”であることから、はそれほど多くは必要ありません。(セラピストの種類によっては高価な機器を準備する必要があります)また、先に述べたようにセラピストを名乗るのに特別な資格は必要ないため、サロンを開業することは比較的容易といえます。しかし、言い換えれば競争相手(ライバル)が参入しやすいことを意味し、常に厳しい競争にさらされる業界でもあります。

したがって、競争相手に対して明確に差別化できるような強みを持っていなければ、生き残ることは簡単ではないでしょう。

セラピストのカウンセリング

ビジネスのミッション(使命)を明確にする

あなたは、何のために事業を行うのですか?あなたは、どのような価値を提供して対価を得るのですか?これらは実にシンプルな問いですが、即答できる人は意外と少ないものです。これらの問いに対する回答を明確化するため、まずは「事業ドメイン」と「事業コンセプト」を設定するところから始めてみてはいかがでしょうか。これらを設定することで自らのビジネスのミッション(使命)が明確化されるようになります。

もし設定しないまま事業を開始してしまうと、一貫性のない経営判断を行いがちになり、経営の方向性を定めにくくなります。経営資源の限られた個人事業者にとって、経営判断ミスは痛手となります。“ブレない”経営をするためには、事業ドメインと事業コンセプトの設定が不可欠なのです。最初に事業ドメインを設定してみましょう。事業ドメインとは自身がビジネスを行う領域のことで、次の3つの視点で整理します。

  • 誰に?(顧客のターゲットはだれなのか?)
  • 何を?(顧客にはどんな商品・サービスを提供して満足してもらうのか?)
  • どのように?(その商品・サービスはどうすれば提供できるのか?)

これらはできるだけ具体的に定義するように心がけますが、細かくなりすぎてもいけません。バランスを考えつつ最適な事業ドメインを検討します。例を紹介しましょう。

Aさんは大手リラクゼーションサロンでセラピストとして5年勤務したのち、東京都港区に自分のサロンを開業することになりました。Aさんは心理カウンセラーの資格を保有していることをいかし、顧客を肉体的な疲れだけでなく、心理的な疲れに対しても改善に導けることを自らの強みと考えています。そんなAさんが設定した事業ドメインは次のようなものです。

【誰に?】
東京都港区に住む多忙な30~40代の女性

【何を?】
心と体の疲れ、両方の癒し

【どのように?】
心理カウンセラーの経験を持つセラピストによって

Aさんはこのように事業ドメインを設定し、以下が自らの使命だと認識しました。
“多忙で時間のない港区女子。そんな彼女たちに少しでも短い時間で心と体の疲れを取ってあげたい”

このように事業ドメインを正しく設定することで経営判断に一貫性を持たせ、自らの使命を明確化することができるのです。

次に事業コンセプトを設定します。
事業コンセプトとは、自分の行う事業を端的に表現したキャッチコピーのようなものとお考え下さい。一言で自分のビジネスの内容を伝え、顧客に自分の事業内容と強みを理解してもらいやすいものにしましょう。
Aさんの場合、事業コンセプトとして次を設定しました。

【事業コンセプト】

バリバリ働く港区女子の、心と体の疲れに寄り添う事業コンセプトを設定したら、顧客と共有するようにしましょう。顧客が目につきやすいもの、たとえば自分の名刺などに記載しておくと良いかもしれません。

このように、開業する前に事業ドメインと事業コンセプトを設定しておきましょう。自分の強みや顧客層を整理することができ、何のために事業を行うのか、どんな価値を提供して対価を得ていくのかを明確にすることができます。

マーケティング

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どこで差別化するのか?

事業ドメインと事業コンセプトを設定したら、競争相手に対し、差別化できる箇所を洗い出します。たとえば次のような着眼点で検討しましょう。

サービスメニュー

・競争相手が提供していないようなサービスがあるか

技術力
・突出した技術力を持っている分野があるか
・対外的にアピールできるような取得を持っているか

提案力
・顧客の潜在ニーズを引き出す手法が確立されているか

接客力
・顧客の感動を誘発するような接客が可能か

利便性
・予約やキャンセルがしやすいか(スマホで空き時間が確認できたり、キャンセル出来たりするなど)

雰囲気
・サロンの雰囲気が顧客層の心をつかんでいるか

立地
・ターゲットとなる顧客にとってアクセスしやすいか

以上の着眼点で競争相手との差別化につながるものがないか整理してみましょう。なお、「競争相手よりも低価格でサービスを提供する」というのも差別化要因になりそうですが、十分な資金力を持たない個人事業者が低価格をウリにすることは大変危険です。低価格ではブランド力の熟成につながりにくいこと、価格競争になったときに大手にはかなわないことがその理由です。

低価格はNG

個人事業者が価格を設定するうえで大切なことは、適正価格を設定したうえで「その価格でも価値を感じてくれる顧客を獲得すること」です。必要以上に価格を下げてしまうと、安さ目当てで顧客が集まり、最初のうちは売上が向上するかもしれません。しかしその売上を維持し続けるため自分やスタッフの労働時間が増加し、身体を壊したりサービスの質を落としたりすることにつながります。癒しを提供するはずのサロンが、自分自身やスタッフが疲弊しているようでは説得力がありません。このように価格をむやみに下げることは、負のスパイラルに陥る危険性があることを知っておきましょう。

 “自分”を商品化する

競争の厳しい業界で生き残るために、競争相手にはマネできないような強みを持っておきたいもの。しかしそれは容易なことではありません。

「自分にはそんな差別化できる商品もノウハウもない。うまくいかないのでは・・・」
と不安になってしまうかもしれません。しかし、独立開業して成功しているセラピストの全てが、必ずしも最初から差別化要因を持っていたわけではありません。実は、成功者にはある“共通点”があるのです。

それは、“自分を商品化すること“に成功しているということです。つまり、顧客からするとそのセラピストに施術してらうことに価値を感じているのです。どんなに素晴らしい技術を持っているセラピストでも、人としての魅力がなければ顧客はつきません。個人事業者のサロンにとって「いかに顧客に好かれるか」はとても重要です。セラピスト業界のお客様は、店ではなく“人”につくからです。実に、顧客の7割以上がリピーターといわれる業界なのです。成功するセラピストになるための秘訣は「自分のファンを作る」ことなのです。

笑う女性

自分のファンを増やそう

自分のファンを増やすといっても簡単な方法はありません。しかしセラピスト業界ならではのチャンスがあります。それは顧客の身体や心の悩みをという、デリケートな情報を得やすい立場にあるということです。
癒しを求める人は繊細でデリケートな人が多く、そんな人ほど体の悩みや弱っている部分を他人には知られたくないと考えるもの。とはいえ、癒してもらうためにセラピストには自分の悩みを話してくれます。だからこそその弱みやダメージに共感してくれるセラピストと出会えたならとても嬉しいのです。もちろん、最初からすべてをはなしてくれるわけではないので、それを引き出すコミュニケーション力やノウハウは必要となります。

顧客と“友達”になる

このように、セラピストは人のデリケートな部分を知ったり触れたりできる、数少ない職業なのです。これは、ひとたび顧客の心をつかみさえすればリピーターになってくれる可能性が高いことを意味します。顧客との距離を縮めるために、友達のような関係になれれば理想であると考えましょう。実際に友達になるというよりも、「友達として接する」という感覚を持つことが大切です。

顧客を友達と思うことで、おのずと接し方が変わってきます。たとえば、週に1回だけ来てもらえば十分な顧客が、毎週2回来てくれるとします。あなたはその顧客に「〇〇さんは週に1度来ていただければ十分ですよ」と心からいえるでしょうか。もちろん2回来てもらったほうが売上は上がりますが、その顧客にとっては必要以上にお金と時間を使っていることになります。あなたがその顧客を友達だと思うことで、自然とそのような提案ができ、顧客の満足度も高まるのではないでしょうか。これが顧客を“客”と思うか“友達”と思うかの差です。

目先の小さな利益を追求するのではなく、長期的な視点で顧客との信頼関係を築いていきましょう。信頼関係を築くことができればその顧客はきっとあなたのファンになってくれるでしょう。顧客があなたのもとで施術を受けたことで癒され、あなたが必要なくなる。これこそセラピストにとって何よりの成果なのではないでしょうか。もちろん、癒された顧客はリピートしなくなってしまいますが、その顧客自分の友達や知り合いを紹介してくれるに違いありません。個人事業者のサロンにとって最大の広告は、クチコミなのです。

このように、少しずつファンを増やしていくことでクチコミ効果もあいまって顧客の数が安定していくようになります。

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ファンとの関係を維持するために

ファンとの関係を長期的なものにするための方法として、費用をかけず最も高い効果が望めるものはブログです。ブログのコンテンツ(内容)は、自分のサロンのことや癒しのトレンドなど、顧客にとって有益な情報を定期的に投稿することはもちろん効果的です。しかし、ブログの目的は「ファンを作るため、あるいはファンになってもらった人をつなぎ留めておくためのツール」と割り切ってしまいましょう。

顧客とは友達に近い関係となることが理想であると先述しましたが、顧客もあなたの日常やプライベートなことを知ることができれば、より顧客との心理的な距離も縮まることでしょう。こうして顧客には自分のことを好きになってもらいます。
ブログは更新頻度がとても大切です。多すぎても少なすぎてもいけません。まずは短くてもいいので週に2~3回の投稿を目指してみてはいかがでしょうか。

まとめ

セラピストは誰でも名乗れ、かつ開業費用も比較的少なくて済むため開業するという意味ではさほど難しいものではありません。本当に難しいのは開業したのち何年も継続していくことです。今回、そのために

  • 「事業ドメイン」と「事業コンセプト」を設定する
  • 自分のファンを作る
  • ファンとの関係を維持し続ける

ことをお伝えしました。顧客を自分の友人と思えるくらい親身に感じ、その人の疲れに寄り添うことが小規模サロンの戦い方。セラピストにとっても、自分に会いに来てくれる顧客がいてその人のために仕事ができる。これこそセラピスト冥利に尽き、独立してよかった!と感じれる瞬間なのではないでしょうか。

文:石井里幸(中小企業診断士)/編集:志師塾「先生ビジネス百科」編集部

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