Last Updated on 更新日2019.4.28 by 44@jyuku
弁護士や税理士、社会保険労務士、行政書士など「士業」と呼ばれる皆さまが、みずからの事務所を立ち上げ、いざ独立開業!という際に悩まれる点のひとつが「ホームページ(WEBサイト)の作成」です。
そもそもホームページは士業の集客に有効なのか、どんな顧客向けに、どれくらいの予算をかけたホームページを制作するべきなのか。あるいは、ホームページの制作やメンテナンスは外注すべきなのか、自分で内製すべきなのか。また、どんなデザインにすればよいのか、ホームページにはどんな機能を持たせるべきなのか…。こんなお悩みをお持ちではありませんでしょうか?
この記事では、士業の皆様向けに、ホームページ作成にあたって留意すべきポイントをご紹介します。
士業にとって、ホームページは本当に必要?
これからご自分の事務所、会社のホームページ(WEBサイト)の開設を検討されている、あるいは既にお持ちのホームページの更新を検討されている士業のみなさまが第一に考慮すべき点は、「何のためにホームページを持つのか」という点です。
もちろん、「競合他社がホームページを開設しているので、自分の事務所のホームページが必要」とお考えになるのは自然なことです。しかし、ホームページを制作し維持するためには、費用が発生します。
詳細は後述しますが、もしWEBデザインを外注するのであれば、初期費用として「ホームページデザイン制作費用」が発生します。維持費としては「ドメイン取得費用」「レンタルサーバー費用」が発生します。「コンテンツ・ブログの更新」を外注する場合には、その都度、費用が必要になってきます。
これらは無料のサービスを利用することも可能です。しかし、士業事務所、企業の「コーポレートサイト」を作成するならば、広告バナーが多数掲載されるような無料のブログサイトではなく、一定の費用をかけて、信頼感のあるホームページを作成することが重要です。
そこで、冒頭に述べた「何のためにホームページを持つのか」、とくにホームページ作成の目的を明確にすることが重要になってきます。
もっとも一般的な目的としては「WEBマーケティングによる集客」や「検索結果に表示されることでの、新規顧客からの信頼・信用の獲得」などが挙げられます。
ホームページを活用したWEBマーケティングは、潜在顧客へのダイレクトマーケティングの手法として、従来の紙媒体やテレビCM、ラジオといったメディアよりも安価に、より絞り込んだターゲットにアプローチできる手段として成長してきました。
また、ホームページはスペースや文字数に制限がありませんので、新聞広告や地域情報誌といった紙媒体の情報を補完するためにも役立ちます。よく交通広告やテレビCMで耳にする「詳しくはWEBで!」「●●事務所で検索!」といったキャッチフレーズで謳われているように、興味を持ってアクセスしてくださった潜在顧客に対して、自社のサービス内容や価格、立地、他社との違いといったアピールポイントを、詳細に伝えることができます。
しかし、もし潜在顧客の大半がご高齢の方で、ホームページをご覧にならない場合はどうでしょうか。また、自治体や公共団体(JETRO等)など、入札や面接で受注が決定する場合はいかがでしょうか。
これらのお客様に対しては、WEBマーケティングの効果は限定的であると想像できますね。もし、このようなお客様を集めたいとお考えの場合は、高額のデザイン費用をかけて、自社ホームページを作成する必要性は低いと言わざるを得ません。
このようなケースにおいて、「WEBマーケティングによる集客」よりも「検索結果に表示されることでの、新規顧客からの信頼・信用の獲得」を目的とするのであれば、「自社ホームページ」にこだわらず、低コストで簡易にWEBサイトを制作できる既存のポータルサイトに登録し、プロフィールを検索可能にしておく、という方法も選択肢のひとつに挙げられるでしょう。ポータルサイトの一例としては、各都道府県の士業団体のホームページのほか、社労士サーチ、弁護士ドットコム、講演依頼.comなどが挙げられます。
また、潜在顧客にSNSユーザーが多いのであれば、Facebook等に自社ページを作成する、という方法も考えられるでしょう。
ホームページ設置の費用対効果を考えよう
次に考慮すべきなのは、ホームページ作成の費用と、期待できる効果がどれほどあるか、すなわちコストパフォーマンスです。例えば、あなたの事業の集客のために自社ホームページを構築するとしたら、予算はどれほどかけられるでしょうか。
ご自身の顧客単価、稼働時間などを考慮し、「年に何人集客してくれるホームページならば、いくら初期費用とランニングコストをかけられるのか」を検討してみましょう。
例えば、あなたが一人で事務所を経営しており、月に5社のお客様からの受注で手いっぱいになってしまうとします。平均客単価が10万円/月の場合、売上高は最大50万円/月です。このとき、集客を目的としたホームページの外注・制作に100万円かかるとする場合、あなたならホームページを発注するでしょうか?
多くの方は、「顧客5社で手一杯ならば、そこまで集客用のホームページ作成には費用を駆けなくてもよいのではないか」「売上高2か月分は高いので、もう少し安い費用で制作できないか」とお考えになったのではないでしょうか。
ぜひ、ご自身の事業についても、同様の考え方で予算の上限を検討してみてください。
ホームページ制作を外注するか、自作するかを決定しよう
一般に、自社のWEBサイトを作成される際に発生する費用としては、以下のものがあります。
・ホームページのデザイン費用
・ホームページ内のコンテンツ執筆費用
・独自ドメイン取得費用(「.com」、「co.jp」などの有料ドメイン)
・サーバーレンタル費用
ホームページのデザインやコンテンツの執筆などは、ご自分で作業すれば無料です。とくに個人事業主として開業される方や、副業・兼業の方などは、WordPressを使いご自身で安価にホームページ作成を行われる方が多くいらっしゃいます。
しかし、ご自分で事務所を立ち上げられる士業の皆さまの中には、業務が多忙で、「とても自分でホームページ作成のノウハウを勉強する時間がない!」という方も多いのではないでしょうか。その場合は、予算内でご希望のホームページ作成を受注してくれる外注先を探してみましょう。
また、外注先を選ぶ際にも、気を付けたいポイントがあります。
・予算感が合っているか
・ホームページ制作実績を掲載しているか
・デザインセンスが合うか
・発注や問い合わせの際のコミュニケーションに問題はないか
・あなたの事務所の強みをうまく汲んでくれるか
・潜在顧客層へ、士業である自社の強みをうまく伝えることができるか
外部に発注する場合には、クオリティに応じて幅広い価格帯のサービスが提供されています。近年は「ランサーズ」など、フリーランスのデザイナーに直接、比較的安価に発注できるサービスも普及してきました。年々、市場価格は変動しますので、まずは「ホームページ制作 費用 相場」といったキーワードで検索し、相場観を把握されることをお勧めします。
士業ならでは!ホームページ作成の注意点
最後にお伝えしたいのが、個人の趣味のブログサイトや、ECショッピングサイトとは異なる「士業のホームページならでは」の留意点3つです。
・ブランドイメージの演出(安心感・信頼感の訴求)
・自社の強みの訴求
・潜在顧客との接点の維持
ホームページは潜在顧客とのコミュニケーションツールです。士業全般の共通点として、顧客からの信頼獲得が重要であることから、ホームページをご覧になった方に「安心感・信頼感」を感じていただけるようなデザインが重要です。
もし、銀行や証券会社のホームページが、蛍光色の派手な色使いで、丸文字のフォントが使用されていたら、どのような印象を持たれるでしょうか。「業種のイメージにそぐわない」「どんな企業なのだろう」と、少し不安に思われるのではないでしょうか。落ち着いた印象の色味やフォントを用い、閲覧しやすいデザインを選ぶことが、安心感・信頼感の獲得に繋がります。
また、士業にとって、自社の強み、すなわち競合他社との違いを訴求することは非常に重要です。提供しているサービスの内容や、過去の受注実績、知見の深い分野などを掲載し、「競合他社との違い」を分かりやすくホームページ上で伝えましょう。
セミナー・執筆実績やイベント告知など、鮮度の高い情報を掲載することも、差別化につながるポイントです。「活発に活動している企業だ」という印象を潜在顧客に与えることができます。
そして「潜在顧客との接点の維持」は必須ともいえるものです。せっかくホームページを閲覧してくださった方がいても、実際にセミナー会場や事務所に誘客することは難しいものです。一度でも閲覧してくださった方が、その後もホームページ上の情報を閲覧してくださるよう、更新情報をFacebook、Twitter、EightなどのSNSで伝えたり、「お問い合わせフォーム」を設置したりするなど、潜在顧客とオンラインでの接点を維持できるような仕組みの構築が、士業のホームページでは必須と言えるでしょう。
文:狩野詔子(中小企業診断士、かのさん中小企業診断士事務所 代表)/編集:志師塾「先生ビジネス百科」編集部