Last Updated on 更新日2018.5.18 by
士業とは〇〇士という資格を持つ人たちの俗称で、「しぎょう」や「さむらいぎょう」と呼ばれます。
- 独立して「自分の城」を持ちたい
- 高度な専門知識を身につけて他の人と差別化を図りたい
そんな高い志を持って士業の仲間入りを果たした皆さんが、より差別化を図るためにさらなる資格取得(ダブルライセンス)を目指されるケースは増えています。
難関資格に見事合格された士業の皆さんには自分なりの確立された勉強方法があるはずですので、一から資格取得をねらう人よりも有利に勉強を進めることができるでしょう。しかし、勉強をはじめてみたはいいけれど、思っていた以上に勉強が大変で「こんなはずじゃなかった」と途中で挫折しまう人がいるのもまた事実です。
ダブルライセンスを目指して勉強を始める前に、他士業の本当の難易度はどれくらいなのか、どれくらい勉強すれば合格できるのか、実際のトコロを知りたくありませんか?
士業の「本当の難易度」を知ったうえでそれでも資格を取得したいと思えるか? を検討していただけるよう、ここでは、取りたい資格ランキングに定番で入ってくる11種類の士業ごとに、リアルな難易度をまとめます。
なお、学習期間は自身の経験、周囲の話や口コミサイト等を参考にしています。また、合格率は直近のデータに基づき丸い数字にしている点にご注意ください。
難易度SSランク
資格 | 学習期間 | 合格率 |
弁護士 | 3~5年 | 予備試験:4%以下 司法試験:20%台前半 |
資格 学習期間 合格率
弁護士 3~5年 予備試験:4%以下
司法試験:20%台前半
難易度が高く学習範囲が広範にわたり、文句なしに日本で最難関の国家資格といえます。ただし、社会人向け法科大学院の開校などで、受験に専念しなくても合格している人が少なからず存在しています。
難易度Sランク
資格 | 学習期間 | 合格率 |
弁護士 | 3~5年 | 予備試験:4%以下 司法試験:20%台前半 |
税理士 | 3~8年 | 1科目13%×5科目 |
司法書士 | 1~5年 | 3% |
弁理士 | 1~5年 | 7% |
不動産鑑定士 | 1~4年 | 短答式:25% 論文式:10% |
資格 学習期間 合格率
公認会計士 1~4年 短答式:13%
論文式:11%
税理士 3~8年 1科目13%×5科目
司法書士 1~5年 3%
弁理士 1~5年 7%
不動産鑑定士 1~4年 短答式:25%
論文式:10%
公認会計士は一度に取得しなければならない科目数が多いため、まとまった時間が必要となり学習に専念できる人が有利となります。合格者数が調整されるので、受験時期により合格率が大幅に違います。どちらかというと短期集中型の人に向いています。
税理士は科目合格制(全5科目)をとっていますのでコツコツ勉強したい社会人に向いています。裏を返せば、1科目のボリュームが多いので1年で5科目を取得することはまず不可能です。長い時間粘り強く勉強できる人なら合格できるでしょう。
司法書士は、合格率が非常に低く、弁護士の受験生が挑戦してくることがあり、競争が厳しくなっています。働きながら受験するなら、こちらも粘り強さが必要になってきます。
弁理士は理系の資格です。受験者数の減少傾向が強く、資格者数は不動産鑑定士に次いで少ないです。特許庁により平均受験回数が4.2回であると公表されています。つまり、平均して4年以上勉強しなくては合格できないということです。
不動産鑑定士は上記のとおり資格保有者数が今回ご紹介した士業の中で最も少ないです。合格者を多数輩出している資格学校の情報を何らかの形で入手することが肝要です。
難易度SS~Sランクの資格は、ボリュームが多く難易度も高いので多くの受験生が受験に専念しています。また、独学では勉強の効率が悪く、ほとんどの受験生が受験のための学校に通っています。そのため、受験生のレベルが総じて高く、時には運も味方に付けながら競争を勝ち抜く必要があります。
難易度Aランク
資格 | 学習期間 | 合格率 |
行政書士 | 3~5年 | 予備試験:4%以下 司法試験:20%台前半 |
社会保険労務士 | 3~8年 | 1科目13%×5科目 |
中小企業診断士 | 1~5年 | 3% |
米国公認会計士 | 1~5年 | 7% |
資格 学習期間 合格率
行政書士 1~3年 15%
社会保険労務士 1~3年 7%
中小企業診断士 1~3年 3%
USCPA(米国公認会計士) 1~3年 17%(1年内合格率)
行政書士は難易度SS〜Sランクの資格を目指す方が、まずは行政書士からチャレンジしてみるケースが多いようです。そのため、受験者層が多岐にわたり、相当の準備が必要な資格です。
社会保険労務士は、マークシート形式で足切りがあるうえ、科目数が多いにもかかわらず統計の数字を問うような問題も出題されるため、内容の理解に加えて確かな記憶力が問われる試験となっています。
中小企業診断士は受験生のほとんどが社会人なので、そのなかでいかに時間を捻出できるかがポイントです。「新たに取得したい資格」調査で1位になるなど、近年人気が上昇している資格なので受験生のレベルは高くなっています。
USCPAは米国の公認会計士の資格です。英語での受験となりますが日本国内での受験が可能となっています。科目合格の期限が短いので、ある程度まとまった時間を作って受験に臨む必要があります。
難易度Bランク
資格 | 学習期間 | 合格率 |
宅地建物取引士 | 1年~2年 | 15% |
資格 学習期間 合格率
宅地建物取引士 1年~2年 15%
宅地建物取引士は、不動産業など資格の取得を必須にしている会社がありますので、思いのほか競争が激しくなっています。
以上みてきたとおり、難易度SSランクからBランクまで、簡単に受かるような士業の資格はないことがわかるでしょう。
また、どの試験にも言えることですが、試験回数を重ねてくると過去問題が蓄積され、過去問題対策を行って試験慣れした受験生たちが増加します。そのため、試験をする側は、難易度を上げるか、試験傾向を変えなければ、同じ合格率を保つことができません。難易度が上がったり、試験傾向が変わったりしたときでも対応できるような深い理解を伴う勉強がどの資格でも必要です。
ダブルライセンスで相乗効果を狙う
以上、士業ごとに難易度を見てきました。ご自身が次に受けたいと思っている資格、どれにしようか迷っている資格について少しでも理解が深まったでしょうか?
意味のない勉強などありません。それは、難関資格に合格された皆さま方が一番よくご存じだと思います。しかし、難関資格を突破するにはそれ相応の代償(努力や時間)が必要です。安易に「もう1つ資格を取得すれば何かいいことがあるかも」と考えるのではなく、
- なぜその資格なのか?
- すでに持っている資格とどのような相乗効果が見込めるのか?
- 今、本当にその資格を取得する必要があるのか?
について、一度立ち止まって考えてみてください。そのうえで、やはりダブルライセンスを目指すという決断をされるのなら、これまで以上に成功される日は近いと思います。
この記事が、ダブルライセンス・トリプルライセンスを目指す諸先生方の参考に少しでもなれば幸いです。
文:藤本江里子(税理士、中小企業診断士)/編集:志師塾「先生ビジネス百科」編集部