Last Updated on 更新日2019.5.10 by 44@jyuku
中小企業診断士は経営コンサルティングに関する唯一の国家資格として、社会人の間でも非常に人気のある資格です。しかし税理士や社会保険労務士などの他の士業と異なり、独占業務がありません。
このため資格取得後の独立には非常に高いハードルがあり、独立に踏み切れずに企業内に留まる人が多いのが現状です。
本記事では、将来的に独立を考えている企業内の中小企業診断士やこれから資格取得を目指す方に向けて、「独立までに準備しておきたい5つのこと」について紹介いたします。
独自の提供価値を明確にする
◆提供価値はこれまでのキャリアの中にある
中小企業診断士として独立したいと考えても、「どうやって自分の強みをアピールしたら良いか?」、「自分には特別なスキルがないのではないか?」と考えてしまう方が多いのではないでしょうか? しかし中小企業へのコンサルティングには必ずしも専門的なスキルが必要とは限りません。
技術開発などの専門性が高いスキルや実務経験がなくても、ご自身のこれまでのキャリアの中で提供価値になり得るものがあるはずです。例えば、営業部門の方であれば顧客に向けて分かりやすいプレゼン資料を作成したり、また管理部門の方であれば会議の効率化や削減に取り組んだ経験があると思います。こういった取り組みは一部の中小企業では十分な取り組みができていない部分もあるため、提供価値のひとつになり得る可能性が高いです。
◆自分のキャリアの棚卸しをしてみる
自分の経験はその人固有のものであり、全く同じキャリアを持つ人はいません。ベースとなる中小企業診断士のスキルとこれまでのキャリアで培ったスキルを組合わせることで独自の提供価値にすることが可能になります。書籍や他人から教わった知識よりも、自分の経験に基づいた知見やノウハウの方が大きな強みとなる可能性が高いです。
まずは中小企業に対してどのようにお役に立てるかという視点で、自分がこれまでにやってきた仕事を時系列で洗い出してみることをお勧めします。その中から自分の「売り」につながるものが見つかるはずです。
ベースとなるスキルに新たなスキルを追加する
◆別のスキルと組合わせることで他者との差別化を図る
これまでのキャリアでの経験に基づいたスキルやノウハウは大きな強みとなりますが、単一のスキルだけで差別化を図ることは実際には難しいと思われます。営業や経理など一つのスキルで差別化しようとすると、社外でも通用するような突出したレベルのスキルを保有していないと大きな差別化にはならないでしょう。
このため他者との差別化を図るためには、別のスキルと組合わせることで、より一層強みを強化することが考えられます。仕事で新たに習得が必要になりそうなスキルや、以前から興味を持っていて、やってみたいと思っていたことに取り組んでみてはいかがでしょうか?
◆新たな業務に積極的に取り組んでみる
これまでのベースとなるスキルとは別のスキルの習得を目指して、社内での新たな業務に自ら積極的に取り組んでみることも良いと思います。例えば新規事業の立ち上げ案件があれば手を挙げてみるとか、管理部署から営業部署など他部署への異動を志願することなどが考えられます。また最近の事例であれば、部署内でRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入に関する取り組みがあれば、メンバーとして参加するのも良いと思います。
さらに新たな仕事に取り組む上では、意識的にアプトプットすることが大切です。独立後の強みに繋げることを意識してスキルの強化を図りましょう。
独立後を見据えた人脈を構築する
◆意識的に社外の人と接する機会をつくる
独立後を見据えて、会社員のうちから意識的に社外の人と接する機会を増やすことも有効です。具体的には異業種交流会や士業同士の交流会などが挙げられます。こういった人脈は独立後に仕事を獲得していく上で、役に立つ可能性が高いです。
その他では中小企業診断士の協会に入会することをお勧めします。協会は各都道府県単位
で存在し、ものづくりや知的財産、事業承継などの様々なテーマについての研究会などの活動をおこなっています。こうした研究会に所属することで、既に独立している先輩診断士から独立に向けてのアドバイスを受けることができます。また研究会の場で発表を行うことで自身のスキルのレベルアップを図ることができ、さらに先輩の診断士に対しても自分の強みをアピールすることができます。
独立当初は先輩診断士からの紹介で仕事を獲得する機会が多いので、独立前に自分のスキルや強みを知ってもらうことは非常に重要だと言えます。
◆社内の人脈も大事にしておく
一方で現在の会社の人脈も大事にしておく必要があります。将来的に現在の会社から仕事の依頼を受ける可能性もあるので、独立後も以前に在籍していた会社とは良好な関係を維持しておくことが望ましいでしょう。逆に会社との関係が良くないと、独立後の仕事に悪影響を及ばすことも考えられます。独立の数ヶ月前から計画的に退職準備を進めて円滑に退職できるように努めましょう。
病気にならないように健康に留意する
独立後は安定した収入の保証がなくなります。会社員であれば、少しくらい休んでも給料は貰えていましたが、独立していれば休んだ期間は収入が途絶えることになります。
そのような状況にならないためにも、極力病気にならないように普段から健康に留意することが大事です。
具体的には、暴飲暴食を避けて睡眠をきちんと取るようにして、規則正しい生活を心掛けるようにしましょう。また健康診断や人間ドックの検査結果にも注意して「要治療」や「要精密検査」などの項目があれば、早めに再診を受けるようにしましょう。
また万が一、病気やケガなどで長期間働けなくなるような事態に備えて、「所得補償保険」に加入することを検討しても良いと思います。「所得補償保険」とは、被保険者が病気やケガにより勤務または業務に従事することができなくなった場合に、その期間の収入などの補てんとして保険金が支払われる損害保険契約のことです。このような保険を契約しておけば、将来のリスクに備えることが可能です。
まとまった金額の貯蓄をしておく
独立当初はすぐには仕事が取れない状態が続く可能性があります。このため、独立後の数年間の収入は、会社員時代と比較して大幅にダウンすることも十分に考えられます。
このような状態に備えるためにも、ある程度まとまった金額の貯蓄をしておきたいものです。理想としては1年間の生活ができるだけの貯蓄額があると安心です。
金銭面でのゆとりがあれば精神的にも余裕が生まれるため、独立後の活動に腰を据えて取り組むことができます。
いかがでしたでしょうか。
中小企業診断士として独立するまでには、多くのことを準備しておく必要があることを認識して頂けたと思います。これらの準備については、理想としては3カ年程度の中期的なスケジュールを作成して、計画通りに進めたいですね。
みなさんが独立診断士として活躍されることを願っています。
文:伊藤伸幸(中小企業診断士)/編集:志師塾「ビジネス百科」編集