Last Updated on 更新日2018.11.19 by
司法試験に合格された後や、ある程度の実務経験を積まれた後に税理士事務所の開業を目標とされている先生は少なくないことでしょう。
開業し成功するために最初に考えなければならないことの一つは、どの程度の資金が必要かということです。
開業するにあたっては、一般ビジネスで必要な費用に加え、税理士事務所だからこそ必要とされる費用もあります。
今回の記事では、税理士事務所の先生が開業する際に、目安としてどれだけの開業資金を準備すればよいのかを案内します。
事務所にかかる開業費用
事務所を構えるために必要となる資金については、テナント費用に限らずさまざまなものがあります。
テナント費用
事務所のテナント費用に関しては、大きく分けて3パターンあります。
オフィス物件を借りる
月々の賃料として賃料が必要なことはもちろんですが、オフィス物件の場合は住居用物件に比べて保証金(敷金)が高く設定されていることに注意してください。賃料月額の6~12ヵ月分が保証金の相場です。さらにテナントオーナーの方への礼金が必要な場合もあります。
また、入居時にリフォーム・修繕が必要な場合、一般的にその費用は入居者負担になります。
テナント物件を借りる場合、その費用が開業資金の中で最も大きな割合を占めることになるでしょう。
自宅を事務所として利用する
自宅を事務所とする場合はこれらの費用が一切かかりません。デメリットとしては、面談を行う際に顧客や業者の方を招きづらいので、喫茶店や外部の会議室を利用するかお客様先に毎回出向かなければならないことです。
レンタルオフィス、コワーキングスペースを活用する
レンタルオフィスとは、オフィスとしての機能を備えた月極の貸し事務所のことです。コワーキングスペース・シェアオフィスは、一つのオフィス空間を複数の利用者と分け合って、共同してビジネスをするスペースのことです。
レンタルオフィスではもちろん、コワーキングスペースやシェアオフィスでも事務所の所在地として登記可能で、起業家や個人事業主に人気のサービスです。
メリットは初期費用が抑えられることです。
保証金も賃料の2、3か月分がとテナント物件よりもだいぶ安くなりますし、入居時からビジネスに必要な備品が揃っています。また、これらの物件は駅近や繁華街など、立地条件が良いことも魅力の一つです。
設備費用
税理士事務所の設備として必要なものは、会計ソフト、インターネット設備、OA機器があげられます。
会計ソフト
以前はパッケージソフトが主流でしたが今は月額登録制のクラウドサービスが主流となっています。サービスによって異なりますが、月額は数千円のものが主流です。
インターネット設備
事務所のホームページ作成・運用、会計ソフトの利用、顧客とのメール対応など、税理士事務所の運営にホームページは不可欠です。
レンタルオフィスやシェアオフィスではあらかじめ環境が整っているかと思いますが、テナントを借りる場合や自宅を事務所にする場合、インターネット光回線として月に5,000円程度は見ておきましょう。
OA機器
固定電話、複合機(FAX、コピー機)、パソコンといったオフィス機器については個別に必要性の有無を判断しましょう。最近、固定電話をひかずに携帯電話で間に合わせる先生が増えています。
1、2名の体制で運営される場合には携帯電話のみで十分ですし、電話がないことの対外的な体裁を懸念にされる場合は、「03」「06」などの市外局番をスマホに割り当てられるアプリサービスもあります(対象外地域もあります。詳細はアプリ提供会社にお問い合わせください)。
複合機については、あれば便利なことは間違いないですが費用の高さがネックです。リース契約の場合でも、毎月数千円以上の費用が掛かりますし、途中解約できません(一般的なリース期間は6、7年)。
家庭用コピー機を購入し、大量のコピーが必要な際のみ、キンコーズなどの有料サービスを利用するといった手段もあります。パソコンは必須ですが、既にお持ちのパソコンをそのまま使用できれば問題ありません。
さらに、シュレッダーも非常に重要なOA機器です。個人事業主向けの小さなものでも4~6万円程度かかります。少しでも安く抑えたい場合は、中古品も多く流通しています。
備品代金
自宅やテナントを事務所にする場合は、オフィス家具やオフィス用品を取りそろえる必要があります。レンタルオフィスを利用される場合でも、棚やラックなど必要に応じて買い足す必要が生じるでしょう。
オフィス家具やオフィス用品を購入する際はアスクルやカウネットなどの業者でネット注文をすると、安くて品揃えも豊富です。カタログに金額も掲載されていますので、費用もあらかじめ計算しやすいと思います。
事務所にかかる費用まとめ
費用の面ではレンタルオフィスやシェアオフィスが非常に優れています。
事務所のレンタル費用としての安さもそうですが、設備や備品があらかじめある程度そろっているので、仕事の効率という点でも魅力的です。業務拡大の際などに、すぐに退去できるのも魅力ですね。
レンタルオフィスごとにサービス内容はまちまちなので、契約前には複合機や電話代行などのオプションサービスを確認しましょう。設備や備品については、必要性の有無や見積額などをまとめるチェックリストを作っておくと確認しやすいかと思います。
税理士としてかかる費用
続いて、税理士事務所を開業するために発生する費用について紹介します。税理士として登録するには、日本税理士連合会の名簿に税理士として登録しなければなりません。
登録にかかる費用は、以下の通りです。
日本税理士連合会に税理士として登録するためにかかる費用
名称 | 費用 |
登録免許税 | 60,000円 |
登録手数料 | 50,000円 |
登録時研修費用 | 5,000円 |
※登録時研修は、税理士登録直後に受講が義務付けられている研修で3日間にわたって実施されます。
所属する地域の税理士会支部の入会金・会費など
名称 | 費用 |
税理士会入会金 | 30,000円~50,000円 |
税理士会年会費(年間) | 100,000円~150,000円 |
会館建設費 | 20,000円~50,000円 |
税理士会の支部を選ぶことはできず、先生の事務所の位置によって自動的に所属する支部が決まります。
支部は、「東京」「近畿」などの大きなブロックと、「新宿」「浪速」などの小さなブロックの両方に所属する必要があり、その両方に年間費用を納めなければなりません。
支部によって入会金、年会費は異なり、例えば東京税理士会新宿支部の場合、
入会金:40,000円(東京税理士会)
年会費:81,000円(東京税理士会)+36,000円(新宿支部)
会館建設費:20,000円(東京税理士会)
となります。
集客・顧客獲得のためにかかる費用
集客や顧客の新規獲得のためにも資金が必要です。
Webサイト開設費用
営業を行うためにWebサイトの開設は不可欠です。Webサイトの制作費用は、数万円程度から100万円を超えるものまで大きな幅があります。
デザインと集客力に関わってくるので、安ければよいというわけではありません。閲覧者に安心感を与え、パンフレット代わりになるホームページを作成するためにはWebページ制作会社に依頼するのが理想です。その際の費用としては、三十万円以上になるかと思います。Webサイトのポイントは、見栄えと集客力です。
また、Webサイトは開設後もサーバー費用として月々数千円以上の費用が掛かります。作成前に確認しておきましょう。
名刺制作費用
名刺は、格安のインターネットサイトを利用すると100枚1,000円以下から発注できます。士業に特化した名刺を作成している業者もありますので、インターネットで検索してデザインや字体が好みに近い業者を探されると良いでしょう。
パンフレット制作費用
パンフレットは営業ツールとしてだけではなく、事務所の信頼性を高める効果もあります。新規作成の費用の相場はデザイン+印刷100枚で10万円程度です。
パンフレットを作成せずに予算をWebページの作成費に回したり、小型のノートパソコンやタブレット端末を購入して、お客様先でデジタルパンフレットとしてWebページを活用したりするといった方法を取られる先生もいらっしゃいます。
広告宣伝費用
固定客のついていないうちは、広告も重要になります。オンラインとオフラインの広告手法について紹介します。
オンライン(リスティング広告)
インターネット広告で、効果の即効性が高いのがリスティング広告です。
代理店に運用を依頼する方法もありますが、税理士事務所の場合は先生ご自身で運用されても十分対応できると思いますので、余分な費用が発生しにくいことも魅力です。
費用をかければかけるほどホームページのアクセスを増やせる可能性は増しますが、3万円、5万円など月の予算を仮で設定し反響を見ながら月額を調整していくと無理なく運用できます。
オフライン(DM、チラシ)
オフラインの営業については、クライアントを法人と個人に分けて考えると良いでしょう。
法人相手の場合には、近隣の企業に向けてのDM送付をおススメします。
インターネットで近隣の会社を検索し、一言電話を入れてから送付すると効果的です。
強く売り込もうとすると警戒心を持たれてしまいますが、「税理士として開業しました」という挨拶とともに「パンフレットを送付させてください」とお願いすれば、挨拶なしに送付するよりも目を通してもらえる可能性が高まります。
経営者や総務責任者の方と直接話すことができれば、将来的に税務顧問の候補として検討してもらえる可能性も生まれます。
個人の相手にチラシを送付する際には、セミナーやイベントを周知する内容にすると効果的です。税理士事務所というチラシを見てもあまりピンとこない個人の方でも、「節税セミナー」、「自営業者のための確定申告のコツ」といった読者のメリットに訴えかける内容であれば反響が上がるでしょう。
チラシを挟む媒体ですが、40代以上の方をターゲットとする場合は新聞折り込み、20代~40代をターゲットとしたい場合にはフリーペーパーが効果的です。料金の相場は、いずれも数万円~20万円ほどです。
まとめ
税理士の先生が開業される際に必要な費用についてまとめました。
税理士開業の場合、自宅やレンタルオフィスを事務所として活用すれば、テナント事務所を借りるよりかなり節約できますが、登録費用だけで25万円以上もの金額がかかってくるので、想像以上にお金がかかると思われるかもしれませんね。
注意したい点としては、賃料やWeb運営維持費、税理士会年会費、広告費など、開業後にも運転資金が必要であるということです。成功するために重要なことは、顧問契約を多く獲得して運転資金を大きく上回る収益を上げていくことです。
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