Last Updated on 更新日2018.7.3 by
集客のなかで、最も効果が高いのは、口コミや紹介によるものです。ところが、積極的に口コミや紹介を誘発するような取り組みをしている税理士の先生は今のところ数多くないように思います。
集客方法は紹介以外にも色々とありますが、相性の良い顧問先からの紹介は、同様に相性のよいお客様であることが多いため、紹介は非常に有効な集客の手段となりえます。
ここでは、紹介により顧問先を増やすために持つべきマインドを7つ話したいと思います。
この記事の目次
紹介してください」とはっきり言う
先生方は、顧問先に対して「お客様を紹介してください」と何回言ったことがありますか?
営業成績の高いビジネスパーソンは、必ずと言っていいほど、このセリフをお客様に明確に伝えているものです。
税理士の先生は、営業にあまりいいイメージを持っていないことが多いようです。そのため、「お客様の紹介をしてほしい」ということを、遠慮して顧問先などのお客様に伝えていないケースがほとんどです。
お客様が本当は紹介したいと思っている知り合いや友人がいる場合でも、あなたが忙しそうにしていると、「紹介しない方がいいのかな」と思ってしまっているケースが実はよくあるということを、先生方はご存知でしょうか。とてももったいないお話です。
「税理士を探している人がいたらぜひ私に紹介してくださいね」とだけ言っておけば、すぐに紹介してもらえることはないかもしれませんが、いつかそういう機会があったときに、あなたの顔を思い浮かべてくれるでしょう。
「紹介してください」と言うだけならタダです。恥ずかしがらずに、紹介して欲しいと思っていることを、お客様に伝えてみましょう。あなたを応援したいと思っているお客様なら、きっと紹介してくれるはずです。
あなたはそもそもなぜ税理士になったのですか?
なぜ独立して税理士事務所を開業したのでしょうか?
どんな人をお客さんにしたかったのでしょうか?
そして、そのお客様に何をしてあげたいと思っているのでしょうか?
初心に返って、それらのことをもう一度思い出してみてください。そして、できればあなたが「こんな人に向けて、こういうことをやりたい」と思っているということを、口に出して、目の前のお客さんに伝えてみて下さい。
その想いがお客さんに伝われば、お客さんはあなたの支援者となり、さらなるお客さんを紹介してくれます。
「紹介してください」というときには、伝え方が具体的であればあるほど、お客様も「そういえば、こういうことで悩んでいる人がいたな」と思い出してくれます。
たとえば、「私は事業承継を得意としています。事業承継のことでお悩みの方がとても多いですが、私は事業承継でお悩みの方全員の問題を解決したいと思っています。事業承継で引き継ごうと思っているけど、どうしたらいいかわからないという悩みを持っている現経営者の方や、これから事業を引き継ぐ予定の後継者の方のお知り合いがいらっしゃれば、ぜひご紹介くださいね」といったようなイメージです。
「事業承継といえば〇〇先生」、というイメージができるので、お客様としても紹介しやすくなります。
税理士はサービス業と心得る
先生方は、お客様からお中元やお歳暮を受け取った事はありますか?
歴史ある地域密着型の税理士事務所であれば、お客様からそういった贈り物を受け取るケースもあるかと思います。しかし、近年ではそういったことも減少してきているようです。
税理士が資格を持っているだけで「先生」と呼ばれて尊敬される時代は残念ながらもう終わりました。
税理士は、税理士業務のサービスを提供しているので、当然のことながら業種としてはサービス業に当たります。税理士業はサービス業ですから、目の前のお客様に何ができるのかを、日々考えなければなりません。
どうすれば、お客様に満足してもらえるようなサービスを提供できるのか?
税理士の先生は、資格のうえにあぐらをかくことなく、そのことについて真剣に考えるときが来ていると言えます。
あなたは、お客様にとって、何でも気軽に質問をしやすい先生でしょうか?
なんとなく、相談しにくい雰囲気だと思われていませんか?
一度立ち止まって考えてみてください。
従業員を雇用されている先生は、従業員満足度を高めるための努力をすることもサービス向上のためには大事だと言えます。
というのも、顧客満足度を高めるための一つの考え方に、「インターナル・マーケティング」の考え方があります。インターナル・マーケティングとは、顧客満足度を高めるためには従業員満足度を高めることが重要であるとの考え方に基づき、従業員満足度を高めるために行う各種施策のことをいいます。
税理士事務所の場合は、担当者の満足度が低いと、ダイレクトにお客様にもその印象が伝わってしまいます。また、従業員の入れ替わりが激しいと、担当者がコロコロ変わることになってしまい、お客様は同じ説明を何度も繰り返すことになり、顧問先の満足度は往々にして下がりがちです。
サービス業である税理士事務所も、インターナル・マーケティングなどの考え方を取り入れ、顧客満足度を高める努力が必要です。
毎回、新しい情報を提供する
お客様のところへ月次訪問で行く時に、新しい情報を提供するよう努めているでしょうか?
お客様は毎回税金の話ばかり聞いて飽き飽きしていても、それを伝えてこないケースがままあるといいます。
そういった場合、お客さんは不満を抱えており、いつしか顧問税理士を変えたいと考えるようになってしまいます。
そこで、お客様を飽きさせないようにするために、毎回何らかの新しい情報を提供するようにしましょう。
「もうネタ切れだよ」と思われているかもしれませんが、探せばいくらでも伝えるべき情報はあるものです。
新聞に載っているささいなニュースについて税務面からどう考えるかといったようなことでもいいでしょう。税務の話だけではなく、会社法や民法などの改正の話、最新の経営理論の話からお客様が好きな芸能人の話まで、とにかくお客様に少しでも関係のある話であれば、何でもいいのです。
要は、お客様のことを常に考えていて、何か新しい事を提供しようとしている先生の「姿勢」が伝われば、必ずお客様から評価されます。
「うちの顧問税理士さんはいつも新しい情報をくれるんだよ」と、周りの経営者仲間に自慢したくなるような話題をいつも提供するように心がけてください。「私にもその先生を紹介してよ」という話になれば、もうけものです。
情報提供はスピード重視で
情報提供をするときは、内容の正確さ・詳細よりも、スピードを重視することをおすすめします。
「そんなこと言っても、情報提供はじっくりと情報を吟味してからでないと、伝えられない」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、お客様は、先生の想いに反して、内容の正しさよりもスピードを求めていることの方が圧倒的多数です。
なぜなら、環境変化が激しい今日では、いかに情報を素早く入手するかが大事になってきているからです。
「経営者仲間から、こんな情報を得たけど、どうして先生は教えてくれなかったの?」
そう顧問先から言われたことはありませんか?
もし言われたことがあるとしたら、お客様の望むスピードで情報提供できていないということなので、危険信号が灯っていると思った方がいいでしょう。
それでも、スピード重視にした場合に、情報の正確性のところが気になるという先生は、お客様に対して、「まずはスピード重視で情報をお伝えします。正確なところは、追ってお知らせしますね」と断っておけばよいのです。慣れてくると、お客様はそこまで情報の正確さは求めていないということがわかると思います。
一般に「情報は生モノ」というように、早く伝えることがお客様にとってのメリットにつながるケースが増えています。まずは情報のスピードを重視するようにしてください。
ダメなものはダメと言える
実務では、お客様から「もっといい節税のやり方はないのか」とか、「銀行に提出するためのきれいな帳簿を作って欲しい」と言われることもあるかと思います。
売上が思うように伸びないと、お客様の言いなりになってしまいそうになる気持ちはわかります。
しかし、税理士には、職業柄、納税者と国の中立的な立場を保ちながら、お客様に適正な納税をしていただくような仕事をしなければならないという使命があります。
お客様に対しては、「ダメなものはダメ」と勇気を持ってはっきり伝えましょう。何でもかんでもお客様の言いなりになるより、はっきりとだめな場合は毅然とした態度でそれを伝えられる税理士の方が、長い目で見れば、お客様の信頼を勝ち取ることができます。
お客様の「良き相談者」となる
税理士は会社の重要書類である決算書や領収書等をお預かりすることができます。その点で、会社の“ありのままの姿”を数字ですべて把握できるため、会社にとって重大な役割を担う職業といえます。
経営者は孤独な存在です。経営に関して悩むことがあっても、身近な人を不安にさせたくないので、誰にも相談できずに悶々としていることが少なくありません。そのような状況に耐えかねて、悩みを顧問税理士に相談することがあります。先生は会社の数字をすべて理解しているうえに、ご自身の事務所を構える同じ経営者なので、とても相談しやすい相手です。そんな経営者の「良き相談者」となることは、ひいては紹介を増やすことにつながっていくと言えるでしょう。
経営者の方が悩みを相談してきたときには、「忙しくて時間がない」、「面倒だから」、と言わずに、まずはじっくりと話を聞くことを心がけてみてください。先生の信頼はどんどん高まっていくことになります。そして、いずれは「この先生は親身になって相談に乗ってくれるから」と、経営者仲間を紹介してくれることになるでしょう。
ただおしゃべりなだけの経営者もなかにはいるかもしれませんが、じっくり向き合えば、本当に悩んでいる人と、時間を潰したいだけの人の見わけはつくと思います。本当に悩んでいる経営者の良き相談者となれるよう、コミュニケーション能力を高めていきましょう。
信頼できる専門家を紹介できるようにする
税理士の業務範囲は多岐にわたります。そのため、税理士にはそれぞれ得意分野があります。たとえば、相続税の申告は、事務所によっては年に1回あるかないかというような分野なので、ご自身の事務所で取り扱うかどうかの判断が難しい場合があります。
もしご自身の事務所で資産税を取り扱わないと決めるのであれば、お客様に「うちでは相続税は取り扱っていません」と答えるだけでは不十分です。資産税について、信頼できる先生を紹介できるような体制を整えておくことが非常に重要です。
ワンストップサービスと言う言葉がありますが、それをご自身の事務所で全てできる必要はありません。お客様が何か相談した時に、「あの先生に言えば必ず良い専門家を紹介してもらえる」と言うふうに思ってもらうことが極めて重要です。そうやって先生の事務所の評判が広がり、紹介につながっていくからです。
したがって、普段から自らが専門外としている分野に明るい税理士の先生や、弁護士、公認会計士、司法書士、社労士といった他士業の方との交流を深めておきたいものです。
「交流会に行く意味はない。」
「名刺を何枚持っていても、使えない。」
そう言って、専門家と知り合う機会をみすみす逃していませんか?
信頼できる専門家と出会うためには、“数を打つ”ことも時には必要です。
いつかその人脈を使う時が必ずやってきます。「この人は」と思えるような専門家と出会う機会を、面倒がらずに日ごろから積極的に作るようにしましょう。
ちょっとした心がけで紹介は増える
いかがでしたか。今回紹介したマインドのうち、すでにお持ちのものもあったかと思います。もし、意識したことがなかったものがあったなら、ぜひ今から心がけてみてください。
ちょっとマインドを変えるだけで、紹介を意識的に増やすことができます。この記事が、皆さんの紹介が増えるきっかけとなれば幸いです。
文:藤本江里子(税理士、中小企業診断士)/編集:志師塾「先生ビジネス百科」編集部