税理士として法人化するメリット・デメリット

税理士を法人化するメリットとデメリット

Last Updated on 更新日2021.9.13 by 川口 翔平

税理士法人とは、税理士法によって定められた、2名以上の税理士を社員とする特別法人で、合名会社の一種です。

従来は税理士業務を行うには、税理士事務所、会計事務所として個人で開業するか勤務税理士となるかのいずれかの選択肢しかありませんでしたが、2001年の第4次税理士法改正によって税理士法人設立の制度ができました。

日本税理士会連合会の2018年4月末のデータでは、税理士の先生の登録者数が77,064名であるのに対して、税理士法人届け出数は主たる事務所3,745件、従たる事務所1,864件となっています。

税理士法人と個人で営業を行う税理士事務所の取り扱い業務の内容に違いはありません。どちらも、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つの独占業務がメイン業務です。

では、税理士法人はどのような目的で設立されるのでしょうか?そして、税理士法人にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

今回の記事では、税理士事務所の法人化のメリットとデメリットについて詳しくご紹介します。

1.税理士が法人化するための3つの要件

まずは、税理士事務所を法人化するための要件についてご紹介します。税理士の法人化については、設立要件が税理士法48条に規定されています。

(1) 社員は税理士に限られること(法48条の4①)
(2) 社員の数は2人以上であること(法48条の18②)
(3) 社員に税理士法上の欠格事由に該当する者がいないこと(法48条の4②一・二)

税理士法人は合名会社に準じた扱いになりますので、社員とは出資者、つまり会社役員のような位置づけを指します。税理士業の独占業務を行える唯一の法人ということと、2名以上の社員が必要という点が税理士法人の非常に大きな特徴です。

税理士法人化のメリットとデメリット

2.税理士法人化7つのメリット

税理士法人の具体的なメリットについて紹介します。

2.1 支店を設置できる

税理士法人は、支店を設置することができます。1つの支店に必ず1人以上の税理士資格保有者の在籍が必要となりますので、税理士の先生の人数=設置可能な支店数となります。

2.2 節税ができる

個人税理士事務所の場合は、稼げば稼ぐほど税率が上がり、売り上げが年間1,800万円を超えると所得税と住民税を合わせて税率50%を超えてしまう可能性もあります。法人税は基本的に一律で、法人税、住民税、事業税の合計が36%程度です。

2.3 経費の範囲が広い

法人の場合は、先生自身の給料を役員報酬という形で経費計上できます。また家族の方への給与や、保険、社宅の賃料など、個人事業主に比べて、経費計上できる範囲が広がるため、節税効果があります。

2.4 決算月を自分で決めることができる

税理士事務所、会計事務所の場合は個人事業主のため毎年3月に確定申告をしなければなりません。税理士法人の場合は、決算期を選択できます。例えば、固定資産の売却などにより多額の利益が生まれた場合は、いったん決算とすることにより納税額を抑えることができます。

2.5 退職金を出せる

個人事業主には退職金制度がありませんが、法人化をすれば勤続年数や功績に応じた退職金を支払うことができます。退職金は、所得税の計算上優遇されていますので、事業所得と比較した場合かなりの節税になります。

2.6 社会保険に加入できる

税理士法人の場合は、先生や従業員の方が社会保険に加入できます。負担が増えてしまう一面もあるのでデメリットといえますが、従業員を募集する際にも社会保険が受けられるという点からスタッフの求人が容易になるでしょう。

2.7 欠損金の繰り越しが9年間できる

個人税理士事務所の場合、繰越欠損金の繰越期間は3年ですが、法人の繰越期間は 9年 です。さらに平成27年度の税制改正が行われ、平成29年4月1日以後に開始した事業年度の欠損金額の繰越期間は10年となりました。

2.8 税理士法人化のメリットまとめ

税理士法人制度は、個人では対応しきれない多角的・継続的な業務サービスの提供を可能とするために設けられました。したがって、税理士法人を設立するメリットは節税に関する点と事業の拡大やブランド化を容易にする点に集約されます。

個人事業主が株式会社を設立する際のメリットと多くの部分が共通しますが、法人化しないと支店が持てないこととは税理士業ならではの特色です。さらに、支店の数は先生の人数が上限となりますので、いかに同じ志の先生同士が集まれるかが事業拡大の成功の可否を左右します。

数字で見えるメリットの他にブランド力の向上というメリットも見られます。

税理士という資格そのものがブランド力を有していますが、複数拠点で多角的に営業を行っている企業や将来的に業務の引継ぎが生じる場合などは法人化しておくと1つの案件を複数の人数でカバーできるので、クライアントにとっても安心感を与えられることでしょう。

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税理士法人化のメリットとデメリット2

3.税理士法人化3つのデメリット

税理士法人化のデメリットを紹介します。

3.1 株式会社の場合は役員変更が必要になる

税理士法人の社員税理士の登録変更手続きをする場合(自宅住所の変更、入社、退社など)は、税理士法人の変更登記を法務局で先に行う必要があります。

3.2 登記手続きが必要になる

税理士法人を設立するためには、登記手続きが必要になります。

登記には、以下の情報を記載します。

(1)名称
(2)主たる事務所
(3)法人成立の年月日

(4)目的等
(5)役員に関する事項
(6)従たる事務所
(7)登記記録に関する事項

3.3 事務手続きが必要になる

法人は、個人事業主と比較して変更手続きに伴って提出しなければならない書類が増えます。

変更や解散(廃業)の際にもすべて書類での届け出が必要になるため、気軽に変更や解散の手続きが取りにくくなっています。また、社会保険は、加入時だけでなく年に一度保険料算定手続きが必要となり、事務作業負担が増えます。

3.4 税理士法人化のデメリットまとめ

法人としての形を取るため、手続きや事務作業の負担が増え、内容も煩雑になります。

また、税理士法人の特性上、複数の先生同士でパートナーを組んで経営をしなければならない点にも要注意です。それぞれの強みを生かせるというメリットもありますが、仲違いをしてしまったり、経営方針にずれが生じてしまったりするケースもあるかもしれません。経営方針が二転三転すると、そのたびに煩雑な書類作成義務が生じてしまいます。

最悪の場合、代わりにパートナーを探すか、解散手続きを踏まなければなりません。中長期視野で、将来性をともに考えていけるパートナーとの協業が必須条件となります。

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4.法人化を検討するタイミングはいつがいいか

法人化を検討するべきタイミングとしては、以下のような場面が想定されます。

4.1 二拠点目の出店を考える場合

個人での税理士事務所では、一拠点しか営業できませんので、複数拠点の営業を行いたい場合には法人化して対応する必要があります。

4.2 収入が安定して1,000万円を上回る場合

収入が安定して1,000万円を上回るようであれば、法人として営業を行うと節税効果がみられます。

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4.3 事業を大きくしたいタイミング

複数の地域で営業を行うことや、異なる強みを持つ先生や異なるキャラクターとの先生との協業により、先生同士で相互に補完し合うことで税理士法人としてのサービスを向上させ、事業の拡大につなげられる場合もあります。

5.まとめ

税理士の先生の法人化について、メリットやデメリットを中心に紹介しました。税理士法人は、税理士独占業務を営業できる唯一の法人です。税理士法人のメリットは、節税面と業務の拡大やブランド化に効果的な面があげられます。

デメリットとしては、作成書類や事務処理が多く煩雑になってしまうことです。固定の税率や社会保険の費用負担など負担の方が大きくなる場合もありますし、一緒に税理士法人を設立できる税理士の先生が見つかりにくい場合もあると思いますが、タイミングを見極めて業務の拡大を志してみてはいかがでしょうか?

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