カウンセラーに必要なマーケティング視点

Last Updated on 更新日2019.5.12 by 44@jyuku

カウンセラーとして独立を考えたとき、まず考える必要があるのは、あなたのカウンセラーとしての価値のうち「何を、誰に、どのように」提供するかということです。十分なカウンセリングの技術と経験、豊富な知識さえあれば、自然とクライエントが集ってくるはず。残念ながら現実はそううまくはいきません。技術や経験に加えて、独立カウンセラーに必要なのは、カウンセリングを必要としている人に、必要な価値を、ピンポイントで届けることができるマーケティング力なのです。本記事では、その第一歩として「何を、誰に」を決定するための思考プロセスを、具体例を用いて、詳しく述べていきます。そこが明確になれば、「どのように」という方策や集客の方法がおのずから見えてきます。

SWOT分析という手法で考えてみよう

社会保険労務士や司法書士などの他の先生業とカウンセラーとの大きな違いには、営業活動のしやすさという点があります。他の先生業の場合、どこにコンタクトすれば、見込み客の確保や、案件の受注に結びつきやすいかが、ある程度予測できるため、能動的に営業活動を展開することができます。一方、独立カウンセラーの場合、取得したカウンセリング関連資格の認定団体に対して紹介を依頼する営業をすることはあっても、直接、個人客に営業するというのは難しいものです。
では、どこにいるかわからない見込み客に対して、相手の方から接触してもらうにはどうしたらよいのでしょうか。
「マーケティングの理想は販売を不要とすることである。」これは、有名な経営思想家ピーター・ドラッガー氏の言葉ですが、その理想的な状態を実現するためには、カウンセリング力だけに頼るのではなく、戦略的思考が必要です。そのために、まず「何を」「誰に」という点から考えてきましょう。
マーケティングの意思決定に役立つ枠組みの一つに、SWOT分析があります。SWOT分析は、組織がもつ「内部環境」と「外部環境」の2つの側面から現状を把握し、戦略を立案するために用います。この分析方法は、通常は組織で活用することが多いですが、個人で用いることもできます。具体的には、内部環境を「強み(strength)」「弱み(weakness)」、外部環境を「機会(opportunity)」「脅威(threat)」に分けて各要素を洗い出し、クロス分析によって、その4つを掛け合わせて戦略を考えます。

♦「強み(strength)」×「機会(opportunity)」 
強みを活かして、機会をどうとらえるか
♦「強み(strength)」×「脅威(threat)」
強みを活かして、脅威にどう対応するか 
♦「弱み(weakness)」×「機会(opportunity)」
弱みをカバーし、機会にどう対応するか
♦「弱み(weakness)」×「脅威(threat)」
これらの影響を最小限にするにはどうするか

クライエント像をイメージしてみよう

SWOT分析を始める前に、まずイメージしたいのは、「そもそも有料でカウンセリングを受ける人はどのような人か」ということです。いくつかの観点から考えてみましょう。
たとえば、以下の点は多くのクライエントに共通するのではないでしょうか。

♦時間
時間に余裕がある。または、余裕がなくても時間の使い方を自分で決めることができる人

♦経済的余裕
継続的にお金を払える余裕がある人(カウンセリングを受けようとする方は、1回で自分の抱えている問題が解決するとは思っていないことがほとんどです。)

♦自らの課題や葛藤に対して向き合おうとする姿勢
日常の中で発生する悩みを解決したいというよりは、長期間、持続的に抱えている課題や葛藤を何とかしたいと強く望む気持ちがある人

他にもいろいろ思いつくかもしれません。「機会(opportunity)」の分析の前提として、
クライエントに共通するイメージを丁寧に思い浮かべてみることが大切です。

機会(opportunity)の考え方

ターゲット層がまだ明確になっていない方は、「機会」から考えてみましょう。ターゲット層は、性別や年代などの属性で決めることもあれば、悩みの種類で決めることもできます。(例 劣等感が強い人、学校に行けない人、性格を変えたい人など)
「機会」を考える際には、「カウンセリング業界全体としての機会」と捉えてしまうと漠然とした話になりがちです。そこで、(2)で考えたクライエント像を念頭に置きながら、見込み客になりそうな層をいくつか考えて、それぞれについて幅広く「機会」を洗い出してみましょう。その際は、現在だけではなく、将来にわたって起こりうる状況をふまえて考えてみます。

たとえば、
■ターゲット層1 独身女性管理職
(機会)
・晩婚化によるターゲット層の増加
・平成27年に女性活躍推進法が成立し、女性の管理職比率の上昇が期待できる
・上記の状況下で、能力に自信が持てないまま管理職になっている女性も多い
・独身女性は子育てと仕事を両立する女性の仕事をカバーする傾向にあり、ストレスを抱えている可能性がある
・仕事中心の人生を送ったことで果たせなかったこと(結婚や出産など)への複雑な想いを抱えている場合もある            
                           
■ターゲット層2 定年退職後の団塊世代の男性
(機会)
・特に大企業出身者は、時間とお金に余裕があり、人に話を聞いてもらいたい欲求が大きい可能性がある
・元気でアクティブな世代。退職後のセカンドキャリアを模索する意欲が高い
                   
など、思いつくまま挙げてみましょう。

さらに、それぞれの層が求めていることはどんなことなのかを想像してみます。たとえば、「定年退職後の団塊世代」だったら、「今までの人生を詳しく語ることで、気づきを得て、過去の出来事の意味づけや価値観が変わる。それにより自分らしさやアイデンティティが変化する。その過程で、過去の後悔や囚われから解放され、未来に向けてエネルギーが湧いてくる(※)」ということかもしれません。
おそらくそのような欲求は、普段はとくに意識していないものですが、カウンセラーがわかりやすく言語化して提示することで、自分の中にある欲求に気づいていただく可能性が高まります。
※ナラティブアプローチの考え方

強み(strength)の考え方

強みについては、カウンセラーとしての強みと、経営者としての強みを分けて洗い出していくと整理しやすいです。
カウンセラーとしての強みは、今まで学んできた技術、知識、経験などを具体的に洗い出してみましょう。また、今まであなたのカウンセリングを受けた方からの感想を思い出してみると、思わぬ自分の強みが発見できるものです。カウンセリング関連資格は、ただ持っているというだけでは、その資格を知らない人にとっては効果がありませんので、「○○という資格を持っているので、○○というアプローチを得意とする、○○の分野に強い」などとわかりやすく書き出してみましょう。
経営者としての強みは、「ネットワークが広い」「数字に強い」「ホームページを自分で作るITスキルがある」「体力や健康には自信がある」「打たれ強い性格だ」「決断が早い」など、事業主となる上で、必要だと思うことを細かく書き出してみます。

「弱み(weakness)」について

現時点で「弱み」と思われることがあるのであれば、以下の視点で考えてみましょう。
♦それは強みにもなり得る弱みではないか
(強みと弱みは表裏一体であることが多いものです)
♦事業をする上での影響力の大きさはいかほどか
♦克服することができる弱みであれば、かかる時間やコストは?

そのうえで、事業をする上で影響力が大きく、かつ克服する術がある弱みについては、どのように克服していくかを考え、実行します。

「脅威(threat)」について

外部環境における「脅威」とはどのようなものでしょうか。「カウンセラー」は誰でも名乗ることができる職業名なので、参入障壁が低いといえます。また、最近増えてきたスキルシェアリングサービスは、「手軽にカウンセリングを受けてもらえる」「料金未回収のリスクがない」という大きなメリットがある一方で、価格競争につながるリスクをはらんでいます。脅威を自覚した上で、それにのみ込まれないためにはどうしたらよいか。ライバルのサービスを受けてみて、差別化の方法を考えるのも有効です。

クロス分析のポイント

これまで洗い出した4つの要素をクロス分析する際、最も時間をかけて行うべきものは、「強み(strength)を活かして機会(opportunity)をどうとらえるか」という点です。その際は、ある程度具体的なターゲット層を想定したうえで、強みとクロスさせた方が効果的です。複数のターゲット層を想定している場合は、それぞれのターゲット層に対して別々に行ってみてみます。たとえば、先に挙げた独身女性管理職をターゲットにした場合の強みの例は、

♦組織での管理職経験があるので、共感的に話を聴きやすい
♦知的レベルの高い方へのカウンセリング経験が豊富
♦アサーションやアンガーマネージメントなど、女性管理職の悩みの解決に役に立ちそうな手法に精通している
♦理解力、論理的思考力の高い方に効果的な論理療法を得意とする
                        
などと、強みとターゲット層とのマッチングポイントを探していきます。もちろん、そのマッチングポイントの足を引っ張る「弱み(心配な点)」があるようなら、計画的に克服していきましょう。
その上で、クライエントの視点に立って考え抜いた「クライエントが求めていると思われること」を「どのようなアプローチで提供するか」ということを、コンセプトやプロフィール等で明確に打ち出します。クライエントが「そうだ!私の求めていたのはこういうことだったのだ。」と腹落ちして初めて、ターゲットを引き寄せていくことができるのです。

文:鈴木寧々(中小企業診断士・2級キャリアコンサルティング技能士・産業カウンセラー)/編集:志師塾「先生ビジネス百科」編集部

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