税理士の仕事をAIに取って代わられないために必要なこと

AI

税理士はAIに仕事を奪われるのか

AI(Artificial Intelligence)、人工知能が税理士から仕事を奪う日が、もうすぐそこまで迫っているのではないか…。そう不安を感じている税理士の先生は多いと思います。マスコミで、税理士や会計士といった職業が、人工知能に取って代わられるというニュースが、日々報道されているからですね。例えば、日本経済新聞の2017年9月17日付の記事で、税理士のAIによる代替可能性が92.5%であるという報道があったことは、記憶に新しいと思います。

では、税理士はAIに仕事を奪われる運命なのだから、そうなるのをただ、口を開けて待っているしかないのでしょうか?AIによって税理士は、将来性のない資格に成り下がってしまうのでしょうか?税理士の仕事がいずれなくなるなら、いっそのこと、税理士をあきらめて別の職業に転向することを検討した方がいいのでしょうか?答えはどれもノーだと断言します。

この記事では、税理士が仕事をAIに取って代わられないために必要なこととは何か?をお伝えし、皆さまの不安を払拭したいと思います。

まずはAIのことを知ろう

「彼を知り己を知らば百戦危うからず」ということで、まずは、彼=AIのことについてのお話をしたいと思います。冒頭でご紹介した日本でのマスコミ報道の原型にあるのは、2013年に、英オックスフォード大学のマイケル A. オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士が公表した、「現在ある職業の約49%がコンピュータに置き換わるかもしれない」という研究結果です。

この研究では、この先10年~20年の間に、コンピュータに置き換わる職業として、「税務申告代理人」、「会計士・会計監査役」がすでに挙がっており、代替可能性の確率はそれぞれ99%、94%とされていました。

国家資格としての税理士が存在しているのは、日本と韓国、ドイツのみですから、「税理士」が職業として研究結果にそのまま現れることはありませんが、「税務申告代理人」、「会計士・会計監査役」とくれば、仕事内容はほとんど日本の税理士が行っている業務と等しいと考えてよいでしょう。そもそも、AIは、どのような軌跡をたどり今日に至ったのでしょうか。

よく話題に出るのが、コンピュータ将棋と人の対決の話です。2005年にBonanzaが、2006年にPonanzaが、立て続けにプロ棋士を負かしました。それ以前のAIの技術では、チェスまでは人に勝てても、将棋や囲碁についてはその棋譜数の多さから、勝てないと言われていたため、AIの大転換が起こったと言われています。

さらに、2016年にはAlphaGoというコンピュータ将棋が世界チャンピオンに勝利しました。AlphaGoは、深層学習(ディープラーニング)による棋譜の学習と、自己対局による学習強化が可能となっています。ここから、人に近い情報処理をAIが実現したと言えそうです。コンピュータが全人類の知性を超える時点のことをシンギュラリティ(技術的特異点)といい、2045年にそれが訪れると予測されています。

国税庁や会計ソフト会社のAIの活用

次に、税理士に関係のある業界でのAIの活用について触れておきたいと思います。

国税庁では、2017年6月「税務行政の将来像」を取りまとめて公表しました。それによれば、国税庁はビッグデータやAIを活用した税務に関する相談内容の分析と最適な回答の自動表示を行うことを方針として示しています詳しくはコチラ

また、全国青年税理士連盟では、税理士業務に対するベンダーの「人工知能(AI)の活用・開発状況に関するアンケートの結果について」を公表しています詳しくはコチラ

それによると、会計ソフト会社やクラウド会計の会社では、すでに会計ソフトの勘定科目・消費税の判定について、AIを活用して自動判定する機能のリリース済みかリリース予定であり、また、税務申告書作成(年末調整計算含む)に関するAIの活用予定も検討中であると回答しているベンダーが多くなっています。

さらに、「税務相談業務に関するAIの活用やチャットボットの開発・リリース予定はありますか?」という質問に対しても、検討中であると回答している会社が何社かあります。もちろん、税理士法に抵触しない範囲で、ということになるかと思いますが…。

なお、大手の監査法人では、監査業務にAIが導入されているという話です。また、どの大手監査法人においても、AI時代に対応するための部署が設置され、日々研究されているとの情報もあります。これらのことからも、AIはすでに税務・会計業界にも影響を及ぼしつつあると言えるでしょう。

AIにできることとでないことを理解しよう

なぜ私たちはこういったAIの台頭に不安を感じるのでしょうか?それは、AIのことをよく理解できていないからです。まずは、AIにできることと、できないことを整理して、ちゃんと理解しましょう。不安に思うのはそれからでも遅くはありません。

AIが得意なことは、

  • 大量の情報を正確に処理・判断すること
  • 過去のデータから正確かつ高速に学習すること

です。

反対に、AIにはできない、難しいことは、

  • データに基づかない新しい価値の創造
  • 人とのコミュニケーション

だと言われています。

人とのコミュニケーションのなかでも、特に、AIが相手の意を汲み取ったり、皮肉や冗談を理解したりするまでは、まだまだ時間がかかるようです。このように、AIは必ずしも万能ではないことがお分かりいただけたかと思います。

税理士業務を定型業務と非定型業務に分類する

業務

以上から、簡単に言えば、どのような職業であったとしても、AIに置き換わる仕事は「定型業務」で、置き換えられない仕事は「非定型業務」ということになります。そこで、広範にわたる税理士業務のなかで主な業務を「定型業務」と「非定型業務」に分類してみたいと思います。

    【定型業務】

  • 記帳代行
  • 給与計算、年末調整関連業務
  • 各種申告書作成
  • 各種株価算定
  • 相続税シミュレーション
  • 登記管理、各種届出、法定調書作成 など

記帳代行業務については、領収書を写真に撮影すれば、仕訳が切られるサービスがすでに存在しています。顧問先ですでにそういったサービスを使っているところもあるのではないでしょうか。相続税のシミュレーションや株価算定などの資産税系の業務も、納税者のデータさえあれば、AIの方が計算は得意と言えるでしょう。このように、単に、データを取り込んで、過去と同じような処理を繰り返し行う業務については、今後、AIが代替する可能性が高いと言えます。

    【非定型業務】

  • 税務代理(税理士法第2条1項1号)
  • 税務書類の作成(税理士法第2条1項2号)
  • 税務相談(税理士法第2条1項3号)
  • 資料収集
  • 月次訪問
  • 相続人間の利害関係の調整
  • 税務調査立会

「非定型業務」の上から3つは、皆さんがよくご存じの税理士法に定められている税理士の独占業務です。税務書類を単に作成するところまでは、AIに任せられたとしても、専門家としての精査・判断の部分は税理士が行わなければ、現行の税理士法が改正されない限り、税理士法違反となってしまいます。

また、税務相談のデータベースは、過去の相談事例から人工知能に蓄積できると思いますが、実際に納税者から相談を受けた個別事案について、納税者に対して最終的にどういった回答をするかは、そこに税理士の判断を入れなければ、同じく税理士法に違反することになります。税務調査の立会いも、AIが税理士資格を取得したうえで、調査官との交渉ができない限り、AIにはできません。

そして、最後にハンコを押して責任を取ることも、税理士にしかできません。AIに責任を取ってもらいたいと思う納税者は一人もいないと考えられるからです。そもそも、AIは人と本当の意味でコミュニケーションをすることができません。AIにはコミュニケーションを行う動機づけがないからです。人と人とのコミュニケーションは、AIが人間の心を持った時にはじめて可能となります。

いつか映画のように、AIが心を持つ日が来るのかもしれませんが、技術的な問題以外にも倫理的な問題もからんでくるため、実現するまでには相当の時間がかかると現段階では考えられています。

中小企業の社長は非常に孤独な存在です。税理士の皆さんは、月次訪問の際に、社長の悩みをただただ聞いて帰ることもあるでしょう。AIには、「ただ聞く」こともできません。プログラムを組んで、たとえ聞くことができたとしても、社長がそのAI相手に話して気持ちが落ち着くとは思えません。

非定型業務に「資料収集」という項目を挙げました。納税者は、こちらが依頼した資料を紛失していたり、間違って違う資料を準備していたりすることが往々にしてあります。どうしても資料が見つからない場合に、再発行の手続きをおすすめするのか、ないまま進めるのか、人間であれば、納税者の個性や資料の重要度、その他の事情を勘案して総合的に判断します。

「資料ヲクダサイ!」

と言い続けて納税者を怒らせてしまうAIの姿が目に浮かびませんか?AIにはそういった必要な資料が揃わない場合の柔軟な対応も難しいと思われます。会計事務所の業務範囲は広範にわたりますので、上記の例に挙がっていなかった業務が他にもたくさんあると思います。そこで、今から10分間で、あなたが自分自身で、現在携わっている業務を、「定型業務」と「非定型業務」に分類してみてください。

これから強化すべきは「非定型業務」

取引業務

さて、「定型業務」と「非定型業務」の分類が終わったでしょうか?もう勘のいい皆さんなら、うすうす気付かれていると思いますが、そのなかで、これから強化すべきは、間違いなく「非定型業務」の方です。「非定型業務」には、税理士としての判断が要求される業務、コミュニケーション能力が求められる業務が挙がったと思います。

これから伸ばすべきは、コミュニケーション能力や交渉力、納税者や関係者の意図を汲んだ税務判断ができる力だと言えそうです。これからは、人的資源の投入や、自己投資などは「非定型業務」に寄せていくことが大事になってくるでしょう。また、「定型業務」をいきなり辞めるといっても、それは難しいことだと思います。かと言って、今すぐにAIの導入を検討することも、技術的、金銭的な問題から、まだ難しいと思います。

そこで、「定型業務」をいかに効率化するかを考えておくことが、今は有用であると思います。効率化を進めておくことで、AIを活用する時代にスムーズに入っていけるのではないでしょうか。

税理士業務にAIを使いこなす

AIと手を組む

税理士の資格は国家資格です。国に守られているのですから、他の職業よりも、むしろなくなる確率は低いとさえ言えるのではないでしょうか。税理士としてこれからの時代を生き抜くためには、決してAIのことを怖がって避けてはいけません。むしろ、その反対に、いかにAIを使いこなして税理士の業務を行っていくかを考える必要があります。

これまでお伝えしてきたとおり、税理士業務のなかで部分的にAIを導入・活用することはあっても、税理士業務そのものは絶対になくなることはありません。これからAIの税理士業務への導入に備えるためには、AIに関する最新の情報を常に把握しておく必要があります。大変なことかもしれませんが、税理士の先生は、情報収集能力に長けた人が多いのも事実です。

なぜなら、税理士は、業務上の必要性から、毎年の税制改正の知識をブラッシュアップしなければなりませんし、最新の税務訴訟の動向にも注意しなければならない職業であるからです。ぜひご自身の情報収集能力に自信を持ってください。AIは過労で倒れることはありませんし、ストレスや育児や介護等の理由で退職することもありません。また、顧問先を奪って独立することもありません。

これまでの悩みが、AIを活用することで一気に解決するケースも今後は十分に考えられます。どうでしょうか?そう考えると、AIは、仕事を奪っていく「悪魔」ではなく、これまでの困ったことを解決してくれる「天使」のようにさえ思えてきませんか?

AIが活躍する時代は、AIをうまく活用しながら、非定型業務に多くの時間を割いて、より納税者の期待に応えられるような税理士になれるチャンスの到来であると前向きに考えていただきたいと思います。繰り返しますが、AI時代の到来は、税理士にとってピンチではなく、チャンスなのです。早い段階からAIを使いこなし、どの業界よりも先を行く仕事を、税理士の先生にはできるともの信じています。

文:藤本 江里子(中小企業診断士)/編集:志師塾「先生ビジネス百科」編集部

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